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蹴球症候群

他分野を通してサッカーを解明し、サッカーを通して他分野を解明する
サッカー、またはサッカー以外の分野から日々何を学んでいて、何に気付いて、何に疑問をもち、どんな風に… もっと詳しく
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#サッカー論

サッカーにおける「文脈依存性」について——。いかにゲームをデザインするべきか?

既に存在するシナリオを、現場において他者を統率し、作品を作り上げていく映画監督とは異なり、サッカー監督というのは、机上における言語や図式的な構築(デザイン)から始まり、それを他者に学習させ(る方法論をまた構築し)、実際のトレーニングやゲームにおいて表出させるまでが、サッカー監督における「つくる」という仕事の内容になります。 ピッチ上において、どうやってトレーニングする?どうやって選手に振る舞う?どうやってコーチングする?など実装の部分は一旦置いておいて(実際は完全に仕事を分

サッカーに「テンプレートは必要か?」問題について|パターン・マッチングと効率化

Photo:@photofoot23 変化は、ほとんどの場合「効率化」に向かいます(向かうことを人間が好みます)。サッカーというゲームを見ても、10年前と何がどう違うのかを考えると、「効率化」にあると思っています。西洋人が昔、権力や信仰や慣習に争う形で「科学」を発展させたように、サッカーの世界でも、西洋人はゲームにおける仮説をたて、実験し、データを集め、サッカーを科学的に発展させてきました。その結果、サッカーの世界には「テンプレート」が溢れています。まるで、企業戦略をテンプ

早慶戦の感想|改めて、日本サッカーとは

生で日本でサッカーを観るのは約1年ぶりで、映像でJリーグのゲームを頻繁に観ていたり、来年から就任するチームの試合を映像で観てはいたものの、やはり実際にピッチレベルでみると異なる印象を持つ。 日本に帰ってきてからいくつかゲームやトレーニングを見たが、早慶戦は日本サッカーの象徴のようなゲームだったため、少し所見を述べたいと思う。 ・・・ 呼吸をしていないゲーム

ブランデッドエンターテイメントの概念|スポーツで人の心を動かすためには

観客のいないサッカーには、興味がありません。それ故、私はエンターテイメントとは何か、サッカーをエンターテイメントの視点で見ることとは何を指すのか、ということを考えてきました。 感情の動かないエンターテイメントが存在しないように、サッカーというゲームの本質は「感情」にあると思っています。そういった視点で表現行為をしていこうとすると、サッカー以外の分野からヒントを得ることが多くなっていきます。今回は、これらの領域に関して最近読んだ本の中で、サッカーに大いに応用できる学びがあった

サッカー選手に必要な『INNER WORK』と『OUTER WORK』について

そもそもサッカー選手は、何のために試合や練習、ミーティング、コンディショニング、その他の活動を行っているのか?というところに立ち返ると、「向上するため」という唯一の目的に向かっていることがわかります。これに例外はありません。「向上することによって〇〇」の「〇〇」の部分は、各選手・各団体が持っていても構わないわけですし、状況や機会によって異なることもあるでしょう。しかし「(何らかの要素を)向上させるという目的」からは逃れることが出来ません。 それなのに、「向上とは何か?」とい

プレシーズン開始時における選手との共有事項

サッカー監督(ヘッドコーチ)が、プレシーズンが始まる前(その日)にミーティングで選手と共有しなければならない最低限の事柄を「僕の場合」という前提で共有したいと思います。

『自信のある人間は決断を必要としない』 サッカーにおける自信と結果のロジック

『自信』というのは、ある意味人間のもっとも大きなテーマであると思う。自分を信じているか、そうではないかで、自分を肯定出来るか否かにも繋がるだろうし、ということは、幸せか不幸か、という盛大なテーマにも関与する。 特に僕の場合、20歳くらいまで全く自信というものからかけ離れて人生を送っていたくせに、いくつかのきっかけを経て、今はあらゆる局面で自信を持って生きることが出来ているから、『自信を持つためには…』みたいなことに関しては、自分なりの答えを持っている。 「たったひとつの答

『卓球のようなサッカー』と『ビリヤードのようなサッカー』がわかるとゲームが創れるようになる

チャンピオンズリーグという、世界で最もレベルの高いサッカーのゲームを観ていると、気が付くことがある。僕はいま、訳あってJ1・2・3のゲームを週2試合は必ずフルで観ているのだけど、これまた気が付くことがある。 『分析とは比較することである』とシンプルに言い表すことができるが、世界で最もレベルの高いサッカーと、自分が「慣れ親しんできたレベル」のサッカーを比較して観続けると、明らかにそこにはなんらかの「違い」があり、それは所感的で主観的なものなのかもしれないが故に、誰かと共有する

『カオスエンジニアリングとフットボール』 意図的にバグを発生させる

サッカーとは、つまりカオスである。あらゆる現象の原因が1つであることなど過去にも先にもあり得ず、理論と観察結果を一致させることは極めて難しい。事実には「一時的に」という言葉がついてまわり、変化しない事物など存在せず、ピッチの中と外で、ありとあらゆる要素が流転している。 サッカーというゲームをプレーするに当たって、まずやらなければならないことは、このカオスを受け入れることである。カオスを受け入れないままサッカーに取り組めば、一人残らず、サッカーをすることによって不幸になるだろ

なぜAmazonは日本にだけポイント制度を設けるのか——。マーケティングから学ぶフットボール

アメリカ企業のAmazonは、自国では「ポイント」を発行していないのにも関わらず、日本でだけ「ポイント」制度を設けています。日本のAmazonで買い物をするとポイントが溜まっていくのに、アメリカのAmazonで買い物をしてもポイントが溜まっていくことはありません。ここに、サッカーの世界に置き換えても重要な視点が隠されていると思います。 それは「日本人はポイントが好きだから」というような理由ではなく、ここには『コンペティティブ・ディスアドバンテージ(競争上の不利益)』という言

サッカー監督とは何か——。

監督(かんとく)とは、多くの事柄や人々・組織など見張ったり、指図をすることで取り締ることである。転じて、それらを行う人や組織のこともいう——。wikipediaより 映画監督、現場監督、舞台監督、野球監督 etc.と、世の中ではある組織や集団において、先頭に立って他者をまとめ、動かす人や行為のことを「監督」と呼ぶ。これを書いている私は「サッカー監督」という言葉を使って自らを説明するが、さてそれは、例えば映画監督や野球監督と同じものなのであろうか。 サッカーの世界では、国や

サッカーの特異性は「バッターの立ち位置」でわかる

スポーツの特異性とは何か、と考える。それがわかれば、サッカーへの理解がより深まるからである。サッカーは、他のスポーツと何が違うのか——。 サッカーオタクの僕は、サッカーこそ究極のスポーツ(ゲーム)だと言うし、ピッチ上に注視しても、ピッチ外に目を向けても、サッカーよりおもしろいゲームなんてあるはずがない、と思っている。これはおそらく他のスポーツに従事する人は、それぞれがそのように思っているだろうから議論をするだけ無駄なのだが、少なくとも「なぜサッカーが世界でいちばんおもしろい

自分のインタビューを自分で解説してみる

先日、戦術的な観点におけるサッカーの捉え方と、それを体系化していくプロセスなどを主に話した、インタビュー記事が公開されました。 そのほかにも、私が「エンターテイメント」にかける想いや、監督としてのキャリア像など、別の視点からもたっぷり話をさせて頂きました。まだの方は、ぜひこの記事を読む前にインタビュー記事(前編・後編)をお読みください。 今回は、このインタビュー記事の補足として、自分のインタビューを自分で解説してみようと思います。観点としては、以下の2つ。 ①:「インテ

もしも東洋医学的発想でサッカーを理解する監督がいたとしたら…

前回の続きです。前編を読んでいない人はなんのこっちゃわからないと思うので、前編から読むことをお勧めします。 ・・・ 1883年に明治政府によって発令された「医師免許資格」において、医師になるための資格試験を西洋医学に定められたこと、また第二次世界大戦敗戦後、GHQによって「非科学的な医療」という理由で、禁止処置をとるよう日本政府に圧力がかけられたことなどによって、日本における「医学」はイコール「西洋医学」となりました。近年になって、東洋医学の治療効果を科学的に証明しようと