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展示レポ『心ある機械たちagain』

お久しぶりです!

昨今の状況で、あらゆる美術展示の開催が延期・中止になっており寂しい日々が続きますね。このnoteでは、自宅にいながら過去に開かれた美術展(現代アートがメイン)を振り返る記事をマガジンにまとめています。

今回は、10年前に開催された『心ある機械たち』展のリブートとして今年の2月に行われた展示のご紹介です。動画からご興味がありましたら、作家のページに飛んでみてください。

サムネイルの作品はタムラサトル氏の「回る彫刻(タイトルがあやふやです)」。ターンテーブル上の動物の彫刻が回転するインスタレーションです。

展示概要

基本的に役にたたないけれど、常に黙々と働いていて、どこかやさしく、そこにいても邪魔にならない、でも何か気になる、そんな運動体の展覧会。当時から比べると、コンピュータやiPhoneが、ごく身近な存在になってきましたが、決してテクノロジーだけで全てをカバーできる時代になったわけではありません。むしろ、こういった時代だからこそ、コミュニケーションにおいて、穏やかさや配慮、丁寧さが、必要とされるのでしょう。「機械」と接する時間が圧倒的に増えた時代に、今回登場する「でくのぼうたち」はどういった表情を見せてくれるのでしょうか?
BANK ART公式HPより

鑑賞者が自発的に参加可能なインタラクティブ・アートが流行するなか、この展示における作品のほとんどが「勝手に動いている」機械たち。人間自身の思い通りに動かない、難しくいうと「自己帰属感」がないからこそ、その機械たちに自律性や生命らしさ、ひいては心を感じるようになるんでしょうか。

下記、いくつか作品をピックアップします。すべての作品・作家はこちら↓
公式パンフ:http://bankart1929.com/bank2020/pdf/machine_1912.pdf

川瀬浩介『ベアリング・グロッケン II』

パチンコ玉が転がって4つの出力部に装填され、定刻になると銃のように玉を指定されたタイミングではじく。それらが鉄琴にあたることでメロディ・ハーモニーを奏でるというもの。曲もいくつかパターンがあって、同じ機械で複数の曲を扱えるのがすごい。それよりもまず、パチンコ玉の軌道をしっかり計算する作業は果てしなかっただろうなと。実は、失敗することもあるんですけど、そこが逆にライブ感やスリルを感じさせる。

片岡純也『まわる電球』

4つ角におかれたファンを作動させて、その風により延々と回り続ける電球。片岡氏はこのような日常でよく使われるものを組み合わせて、これまで見たことある様で観たことがなかった現象やモノを提示します。電球は中心部分のソケットが重く安定しているからこそ、円を描き続けられるんですね。

小林椋『TO SELF BUILD』

モーターに繋がれたチューブが蛇のように動く。カメラとディスプレイもこの装置には備わっており、カメラ視点で見る展示空間の不思議さを醸しだす。

三浦かおり『うごめく』

細かくちぎられた紙の群がモーターで(おそらく)かき混ぜられる。まるで動物の毛皮のような動きで、文字から生命らしさを感じ取れる。

OTHERS

今回、作者とタイトルが合致せず、大変申し訳ありません。作者の方々、記事をご覧のみなさんにお詫び致します。

ドラム缶を積んだ移動式の機械。ゆっくり動く機構が備わっていて、決められたペースでドラムが叩かれる。もうひとつの機械とぶつかると反対方向へとまた移動。

砂が溜められた街の形のオブジェが回転して、砂を撒き散らす。

最後に

ここ最近、アートとは明確な社会的な問いを掲げるものだと感じていたところでした。しかし、あえて詳細なキャプションを省き、作品を前面に押し出して鑑賞者に解釈を委ねるような展示だった気がします。



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