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「私」をつくる


 18歳、春。
高校を卒業した自分は、ファッションの世界へのめり込んでいった。

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 小学校入学前に始めた野球。プレーヤーとしての終止符を打った自分は、大学4年間、学業とは別で学校に雇われ高校野球の指導員をしていた。高校野球というのは短いもので、その2年半限定だ。それは瞬く間に過ぎゆく儚さと、情熱を注ぐには十分なほどの魅力に溢れている。

大袈裟にいえば、「やんちゃ坊主(そして彼らを支えてくれるマネジャー達)の2年半」と「そのご家族の2年半」を断片的ながら(熱量はすごいけど)預かる責任がある。

時間の許す限り...いや、最大限時間を作ってその人生に寄り添うと決めて受けた仕事だった。そしてその言葉に嘘なく、彼/彼女らに負けない情熱と、かなりの時間を注ぎ込んだ4年間だった自負がある。

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Martin Margiela 八の字



 その傍ら、のめり込んだのがファッションの世界だった。

最初に好きになったのはVintageファッション。501XXにLEVI'S684や646、EAST WESTのレザーなど、ピッピーなものに惹かれた時期だ。ヒッピーの、あの自由な自己表現みたいなものがとても格好良く感じていた。RED WINGのレア物やWhite'sなんかも好きだった。

その後はデザイナーズブランドの服に手を出し始めた。中でもお気に入りはYohji Yamamoto(山本耀司)。黒が基調で漢らしい。今でも好きなデザイナーの1人だ。

好きなアイテムは同じもの同じサイズを何着か持っていた。黒の厚手のギャバジンのトラウザー、白のシャツ、黒のニット、黒のオーバーコート、たまに作る墨汁染めや藍染のシャツやセットアップ。奇抜なものが好きなのではなく、シンプルで無骨で、格好良い...そんな服が大好きだった。

髪も伸ばしたし、歩く時はポッケに手を突っ込んで歩いた。ファッションは自分の意思表現の1つだし、その思いは今も変わらない。

 また、他にも好きなデザイナーはいた。
Helmut Lang、Martin Margiela、Dries Van Noten、Issey Miyake...彼らの服もよく着ていた。

多分自分は「ミリタリー」「ワーク」なテイストが取り入れられたものと、「どこか日本人らしさを感じるもの」に敏感で、そこに機能美...日常生活や仕事で着る時の利便性が感じられると好きなんだと思う。

今持っている服は少ないけれど、あの頃は850着くらい持っていた。

 そして、デザイナーズのアーカイブ品や良いVintageアイテムも多く持っていた事から、撮影などへのリースやお店への卸、バイイング代行などの仕事も自分でやっていた。

自分の好きから仕事を作る事や、誰も知人がいない世界に足を突っ込みコミュニティを広げる事、幅広い年齢の人たち(高校生〜75歳くらいまでの人)と会話をする事、洋服好きの遊び場に首を突っ込む事...改めて振り返ってみても、この頃の経験は自分の財産になっていると思う。

「洋服が好き」という猛烈なエネルギー...ただそれだけしかない若造を面白がり可愛がってくれた当時の大人たち、あらゆるファッションを受け入れる街の雰囲気、そういうものがとても心地良かった。そして、少なからずファッションの世界への造詣がある事...それは多くの人が自分を受け入れてくれる助けになった。

この国では毎日服を着る。何を着るのかの選択は、見る人が見れば「自己表現の1つにしっかりとした意思を持っているのか?」という捉え方をされる。

そういったものを18歳くらいから肌で感じられたのはとても良かった。一見「身に付けるものの選択」ただそれだけに見えるが、使う言葉や通うお店、誰と過ごすか...など、ありとあらゆる選択は自らの意思と紐付くし、他人に与える印象にもなる。現に自分の事を、よくそこら辺の居酒屋で飲んでいる人、と捉える人は1人もいないと思う。自らの選択の積み重ねがその人のイメージを作るのである。

Barbour BEDALE

 ...そんな風にしてファッションの世界にどっぷり浸かった自分だが、最近は「黒いもの」「普遍的に愛されているもの」「日本人らしさを感じるのも」「機能美のあるもの」が好きだ。

この数週間はBarbourのBEDALE熱が冷めない。これは普遍の美しさと機能美が理由だ。この文章を書いている4/27は久しぶりの休みなので、BEDALEに靴はDr.Martensの8ホールレザーブーツ(光沢のない柔らかなレザーのMade in England)を履いている。

元々ワークウェアを製造していたBarbour社が1980年頃に発売したBEDALE(元は乗馬用ウェア)にDr.MartensのMade in Englandなので、TopsとShoesがイギリスメイドという合わせになっている(自己満)。バーテンダーが味を重ねるように、その日のファッションにもこういうストーリーを持たせる事は格好良いと思っている。(※お洒落ですね!の一言お待ちしています)

 そしてもうひとつ、日本人らしさを感じるという意味で最近引っ張り出したのがPorter Classicの染めリネンのロールアップシャツ(もう何枚か集めたい!)。これは和を感じる美しい幅で、ほんの少しストライプが入っている。ふわっとしたサイズ感も風でなびく感じも本当に美しい。

こういう服は日本人が1番似合うだろ!と勝手に思っている。

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 毎日身に付けるものだからこそ、服にこだわるのは素晴らしい事だと思う。日々の選択がその人のイメージを作る。ファッションには、その人を作る...その助けになる力が確かにある。

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