「設備屋」に求められるスキル Part.4(最終回)
前回まで、設備を文字通り「つくる」工程について説明してきましたが、実はこれらと並行して、設備の制御ソフトウェアを設計製作もする工程があります。前者が形のあるハードウェア、つまり設備の「体」を作ってきたのに対して、後者は「脳みそ」にあたる部分になります。
設備の制御にパソコンを使用するのか、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ:機械制御向けの専用の機器)を使用するかで、全く話が変わってきます。中には両者を組み合わせて使う場合もあり、かなり込み入った話になってしまいます。なので、ソフトに関しては、本シリーズとは別のところで改めて取り扱う、とさせてください。
前置きが長くなりましたが、今回は「調整」「立上げ」と「検証」です。
(1)調整
設備の組み立て・配線が完了すると、電源が投入できるようになりますが、そのままで設計者の意図したとおりに動くわけではありません。
例えば、製品を拾い上げて別の場所に搬送する機構を例に、以下のような動作をすると仮定します。
①搬送アームが、所定の位置(製品が置かれている位置)に移動する。
②搬送アーム先端の吸着ノズルに接続された電磁弁がONして、吸着を開始する。
③製品を吸着できたかどうか、圧力センサで検知する。
④搬送アームが、所定の位置(製品の運搬先の位置)に移動する。
⑤吸着ノズルに接続された電磁弁がOFFして、製品を開放する。
⑥搬送アームが退避する。
このとき、①では「所定の位置」がどこなのか、座標値を搬送アームにおぼえこませる「ティーチング」が正しくないと、製品を吸着できません。また②では製品をしっかり吸着できる圧力(負圧)になるよう調整、③では「負圧がいくつ以上になったら『製品を吸着でき』と識別するか(閾値)を調整、④の搬送先の位置もティーチングが必要、…といった具合に、「実機」を使って調整を行っていきます。
他にも、2つの駆動軸がぴったり平行または垂直になるよう、互いの軸の傾き(走り)を調整したり、ちょうどよい力で製品に接触できるよう圧力を調整したりと色々ありますが、どのような方法で調整すると調整しやすいとか、精度よく調整できるとか、どんな具合に調整すると全体的にスムーズに動くとか、勘所などは経験値によるところが大きいと思います。とにかくたくさんの設備を触る=数をこなすのことが必要になって来ます。
(2)立上げ
こちらも「調整」に含まれるかもしれませんが、制御ソフトウェアを搭載して、一つずつ機器を動作させながら、あるいは自動運転を行いながら、ソフトウェアの不具合=バグを取り除いていく「デバッグ」と、設備の性能を最大化するための動作条件を合わせこんでいく作業とを、行ったり来たりしながら行います。
デバッグについてはソフトウェアの設計製作と合わせて別で説明するとして… 条件の合わせこみというのは、ちょっと分かりにくいかも知れませんがたとえば製品に接着剤を塗る機構であれば、所望の「塗り具合」を実現するために、接着剤の吐出圧力や、ノズルを製品に対してどれぐらい傾けるか、ロボット軸をどれぐらいの速度で動作させるのか、などを調整しながら決めていきます。こちらも調整と同じく、経験が大きく影響する部分になります。
(3)検証
立上げまでで、設備は一通り完成です。「検査」と言い換えても良いかも知れません。作り上げた設備(実機)が、最初に決めた「仕様」通りにできているかを仕様項目ごとに確認して行きます。ここで仕様未達の項目があれば、必要に応じて修正を行います。
すべての仕様を満足できたら、依頼元へ無事に納品。ようやく本当の「完成」です。
(4)最後に
正直に言うと、こんなに長くなるとは思わなかった…最初は何を書いてよいのかわからず「とりあえず」で書き始めてみたら、何ともだらだらと書き綴る結果となってしまいました💦
ですがソフトの部分を除いては「自分の頭を整理する」という目的は達成できました。(自己満足)
次回からは、私の専門である「ソフトウェア」を中心に、ノウハウや知識的なところも織り交ぜながら書いてみたいと思います。
ここまで飽きずに読んでくださり、ありがとうございました! これに懲りず、また次回も読んでいただけたら嬉しいです。
(次回はもう少し、ちゃんと構成を考えてから書きたいなぁ)
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