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学びだらけの町内会活動

MIMIGURI Advent Calendar 2023、20日目の記事です。
多様な専門性を持ったMIMIGURIメンバーたちが、6つのテーマから日替わりで記事を発信しています。
昨日はCultibase Labの事業責任者であり、プロダクトデザイナーでもあるタジーさんの『「便利さ」ではなく、「豊かさ」を生み出すデザインをしたい』。1日8時間かける「遊び」できてるかなぁ……。

ちなみに去年のアドベントカレンダーでは「わからない」を21回も連呼するという記事を投稿しました。

今年こそはMIMIGURIらしく知的な内容を!と思ったのですが、それは他のメンバーにまかせて、わたしはMIMIGURIとはまったく関係なさそうな、自治会・町内会体験について書いてみたいと思います。テーマは「葛藤」です。


自治会参加のきっかけは、団地育ちの原体験。

保育園に通う娘と息子が大きくなり、賃貸マンションが手狭に感じてきたので、2019年10月、東京(の端っこ)に小さな戸建てを購入しました。その後、すぐにコロナ禍となり、隣近所の住民とはすれ違っても会釈をする程度。近所付き合いと呼べるような活動はほとんどありませんでしたが、賃貸の頃に比べれば広い環境で、家族のんびり過ごせる毎日に満足していました。
コロナも落ち着き始めた頃、娘は小学校に進学。別々の保育園に通っていた近所の子どもたち数人が同級生になりました。すると、放課後に子どもだけで公園に行くようになったのです。行動範囲が驚くほど急激に広がりました。

ある日、子どもを連れて実家に帰ると近所のおばちゃんから「大きくなったわね〜」と声をかけられました。わたしは団地育ちで、子どもの頃から今も変わらず、いろんな人が気軽に声をかけてくれます。考えてみると、いつもたくさんのご近所さんたちに見守られていたのです。親の目は届かなくても、親以外の知り合いの大人の目がきちんと届くこと、自分の地域でも子どもに対して同じことができないかと考えました。
もともと近所付き合いのきっかけを探していたわたしは、ちょうど掲示板に貼ってあった「自治会メンバー募集」を見かけて連絡してみました。

不穏な空気が漂う、自治会の役員会議。

会長から「気軽に参加してください」とお返事をいただいたので、それから毎月集会所で行われる自治会役員の会議に参加するようになりました。
70代後半の会長を中心に、50-70代の男女で構成された役員メンバーによる会議。何かを決めるにしても遠慮と押し付け合い。特にドキュメントもないので、アジェンダを消化しているのか、ただの世間話なのか区別がつかないまま、やらされ感が蔓延している2時間を経て、あとは会長が「適当にやっておきます」で終了。
これが自治会か……えらい世界に足を踏み入れてしまったのではないか、と思う一方で、普段からハードな組織開発プロジェクトに向き合っているMIMIGURIメンバーとしては、この状況に「もっと良くできる!」と胸の高鳴りを覚えていました。

その後、参加した会議で話をふられたタイミングに、前述の団地育ち原体験の話をしてから思い切って「みなさんが、なぜ自治会メンバーになろうと思ったのか?」と質問してみました。
さまざまな意見が出る中で「地域に住む子どもたちが、ここで育って楽しかった!と言えるような思い出を少しでも作っていきたい」という副会長の発言をきっかけに、メンバーみんなが共感しながら、もっと地域の人を巻き込んでいこう、言った話で盛り上がりました。
ちょうどその頃、自治会主催の夏イベント準備タイミングでもあったので、子どもが楽しめるイベントを企画しようという事になり、わたしが担当になりました。

みんなが主体性を持って動いたイベント。

子ども向けだけでなく、その両親や祖父母も一緒に来て楽しんでもらいたいと考え、子ども向けには駄菓子模擬店を、その両親や祖父母向けには、フリーマーケットの実施を決めました。
企画を進めながら知ったのですが、役員メンバーはみなさんそれぞれ趣味や特技がありました。デザインが好きな方はイベントポスター制作を、ネイルサロンを営んでいる方はSNSの運用を、フラワーコーディネーターの方は会場の装花を、近所に顔見知りの多い方はフリーマーケットの出品物集め(幼児玩具からエルメスのバッグまで!)を進んでやってくれました。
町内会のグループLINEは毎日、アイデアと進捗共有が活発に飛び交っていて「この町内会ができてから一番盛り上がっているよ」と教えてくれました。
勢いそのままに、当日も100人くらいの地域住民が参加してくれたのですが、中でも「あなたが田島さんね!頑張ってね!」と近所のおばあちゃん3人組に声をかけてもらったことで団地の原体験が蘇りました。
細かいオペレーション課題はあったものの、たくさんの人たちが主体的に動けたことで、はじめてにしては大成功と言えるイベントになりました。

会長から、まさかの発言。

10月の役員会。子どもクリスマス会を企画する時期になり、夏イベントの成功体験をもとに「次は何をしよう?」とみんながワクワクして臨んだのですが、なんと会長が「今年はクリスマスイベントはやりません。夏のイベントは失敗だったし、そもそもやりたくなかった!」という発言をされました。それを聞いた役員たちは「あんなにみんな一生懸命やったのに!」「そんな言い方はないだろう!」と批判が殺到、会議は紛糾しました。極端な状況とはいえ、あんなにやらされ感があったのに、ここまで自分の意見を言い合える会議になったことに感動しました。一方で、会長をこのまま悪者をして退けるのは簡単ですが、町内会という地域活動において、いろんな人の考えを発露する機会はなくしてはいけないし、そもそも会長はなぜそんなことを言ったのか純粋に気になり、その後、二人で話す機会をいただきました。

聞いた話を要約すると2点。一つ目は近所の高齢者住民たちから防災についての相談やクレームを直接受けていたようで、会長にとっては子どもよりも、高齢者のための活動をやりたかったのです。二つ目は、会長という職務には会合参加や、班長さんへの調整連絡、掲示板のポスター管理など、細かいやるべきことがたくさんある。楽しそうなことはみんながやって、誰もやりたがらないことは自分だけがやっている、というモヤモヤを抱えていたのです。
役員メンバーの想いを、活動につなげていくことに注力したあまり、会長への配慮が足りていませんでした。メンバーが盛り上がるほど、会長が発言しにくい場になってしまったのです。
まずは、発言の背景を丁寧に説明をして、会長をはじめそれぞれの役割と活動内容を可視化し、続けること、やめることを精査しながら再分担することから始めました。

自分の暮らしを豊かにするために、できること。

多様な人たちが関わり合う地域活動。価値観も人それぞれなので、大きな志を描きつつ、どんな地域にしていきたいか、お互いの意見を分かち合いながら丁寧に対話を続けて、やるべきことを選択していけるといいのかなと思います。

ここ数年、地域に関するプロジェクトに関わることが増えてきました。地場で活躍されている起業家や活動家とお話をすると、会話の中で「自分が暮らしている地域なんだから、少しでも良くしたいじゃん?」という言葉が自然に出てきます。言われてみれば、すごく当たり前なことなのですが、一般的には良くしたい範囲は自分の家の中だけにとどまりがちのような気がします。その半径をもう少し広げてみると何ができるだろうか?と考えてみると面白いのかもしれません。会社だったら誰かがやってくれることも多いですが、地域だと自分たちでやるしかありません。手触り感のある自治会・町内会活動はとてもおすすめです。

最近は娘の同級生と家族ぐるみでキャンプしたり、子どもたちだけで近所のおじいちゃん・おばあちゃんのお手伝いをして、お菓子をもらって帰ってきたり、数軒隣の大学生お姉さんが子どもたちにダンスを教えてくれてたりと、団地の原体験に近いことができてきました。さらに暮らしを豊かにするために、町内会活動を通じてできることはないか探していきたいと思います。

さて、Day21はハードな状況であればあるほど熱く燃える男、組織コンサルタントの塙さんです。どうぞお楽しみに。

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