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対話ってむずかしい。

あるプロジェクトの話

去年の夏頃からある組織開発プロジェクトを担当した。
経営・事業・サービスそれぞれに細かい課題を抱えていたが、最も問題視すべきだったのは、経営も現場もお互いに思っていることを言わない、誰かに何かを言われたら、言葉の表現に反応する、もしくはそのまま無関心に受け取る。側から見ると、あらゆることを諦めているような状態に見えた。

コンサルタント・ファシリテーター・PM・コピーライターたちと一緒に、インタビュー・経営合宿・全社ワークショップをしながら、ミッション・ビジョンを定義、ビジネスモデルを整理、実現のためのロードマップを描いていったのだが、このプロジェクトでは特に「対話」することを重視した。

過去の経験や未来への想いから自分の言葉で話し、相手の発言がわからなければ、否定するのではなく問いかけ、まとまっていない考えも分かち合うことを対話ルールとし、どんな社会価値を生み出していきたいか?まだ発揮できていないポテンシャルは?現場とのギャップは?それはなぜ起こっている?といった、あらゆる場面で対話を促した。はじめは間違いを避けるような取り止めのない発言が目立ったが、回を重ねるごとにみなさんが自分の思いを語りはじめ、相手に質問をし、時には対立、時には共感し合い、白熱した対話が繰り広げられた。

そして、最終的には、役員と社員たちが、ぶっちゃけどうなの?と全社員の前で対話する公開ラジオ番組が誕生し、毎回時間をオーバーしても、もっと聞きたい!次回も楽しみ!とアンケートで書かれるほどの盛り上がりに。少しずつではあるが、対話をきっかけに組織が回り始める感覚を得ることができた。

パートナーとの関係がうまくいかない

さて話は変わり、(こんな公の場で話すのも憚られるのだが)実はこの半年くらい、僕はパートナーとの関係が非常に悪かった。お互い発言を表面的に捉え、売り言葉に買い言葉で傷つけ合う。(まさに典型的な夫婦関係のバッドパターン)特に「あなたは常識に欠け、バランスが取れない!」と言われることが許せなかった。

僕は社会人経験を積みながら、それなりにいろんな常識を学び、クセの強いコンサルやクリエイターたちやクライアントの間で立ち回っている。また、学生時代のサッカーのポジションはボランチだったし、真ん中っ子で物心ついた頃から姉弟とのバランスを取ってきたのに、である。

子どものために、と仲直りをするが、少し経つとまた元どおり。そう、仕事では対話をしていきましょう!と偉そうに話しながら、家庭ではまったく対話ができていなかったのである。

自分のアイデンティティって?

最近、前職や学生時代の旧い友人たちと、数年ぶりに会う機会があったのだが「お前よく結婚できたよなー。」や「あのマンガのキャラ(僕は読んだことがなかった)が当時のお前に重なるよ」と言われた。しかし、その場では対して気に留めずサラッと流してしまった。

ある日、いつものようにパートナーと言い争いをしてしまい、気晴らしに行ったサウナの休憩室で、たまたまそのマンガが目に入ったので読んでみた。その主人公はめちゃくちゃ自分勝手でワガママな性格だった。あれ?

気になったので、今度は別の友人になぜ「よく結婚できたな」と言ったのか聞いてみたところ、「自分の価値観に合わないことを一切受け入れないから、パートナーはよほど気の合う人なんだな」って。あれ?

自分は、まっとうな常識人であり、あらゆるバランサーになれる役割を持っているという、社会人になって20年ほど信じていたアイデンティティが崩壊しそうで、混乱してきたので、第三者の意見を聞いてみようとカウンセリングを受けた。

どれも自分

カウンセラーの言葉は非常にシンプルなもので、常識人でありバランスが取れるのも、常識に欠けバランスが悪いのも、いずれも自分である。人間は多面的で相反するような要素も当たり前のように持ち合わせているということ。また、人それぞれが持つ枠の範囲で相手のことを捉えようとしているので、対話を重ね、相手を知ることによってその枠を大きくすることができるということだった。

僕は大前提として、自分が常識人であり、バランスを取るのが得意な人間だと思い込んでいたので、パートナーの話をまったく受け入れることができなかったのだが、この話を聞いてから、ふっと気持ちが軽くなり、そうか、パートナーからはその一面が見えているだけで、別の面もあることをきちんと伝えて、枠を広げていこうと、自分の思いを伝え、相手の考えを聞くという対話を意識できるようになった。意見が食い違うことがあっても、たくさん対話を重ねていると、目指していることはほとんどの場合、同じだということもわかってきた。自分を知り、相手の発言に耳を傾け、わからないことは問いかけ合う、そんな対話をすることで夫婦関係は改善した。

と言っている側から「昨日のバーベキューでの飲み方がだらしなかった!」と言われ、だらしないとはどういうことか?を問いかける前に「そんなことはない!」とケンカをしてしまった。やっぱり対話は難しい。

対話についてのちゃんとした話は、Danさんの記事をご覧ください。


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