見出し画像

東京ミキサー計画 7-9

神保町駅-九段下駅-竹橋駅-大手町駅
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
4駅に囲まれた空間をぼくは徘徊する。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
徘徊は夏にかぎる。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
仕事帰りの人に、ぼくは大手町駅の場所を尋ねる。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
また少し歩いて尋ねる。尋ねる。尋ねる。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
みんな好きな方角を指すのが面白い。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ぼくは駅に辿りつけるのだろうか。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
もちろん駅の場所は知っているけど。
ぼくは尋ね続ける。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
他の言葉じゃだめだ。
不審がられるし、答えてくれない。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
すまなそうに路を訊いて、
答えてくれない人はあんまりいない。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
答えてくれた瞬間、
果てしなく別々に進んできた人生が一瞬繋がる。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
その質問がなければ、
永遠に繋がることはなかっただろう。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ぼくはその人生の繋がりを、
ひとときの時間の共有を "小説" と呼ぶことにする。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
心からの「ありがとう」を告げて、
もう永遠に繋がることのない人生の残りを、
また歩み始めることにする。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
photo by maki|@maki_photo_art
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

頂いたお金は、制作費として大切に使わせて頂きます。 いつも支えてくださり、本当にありがとうございます。