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「データを伝える技術」連載を始めます

SlowNewsで「データを伝える技術」という連載を始めます。今日から第1回「コンセプトを決める」が配信されています。

SlowNews」とは、最新の速報などにはなかなか載らない、時間をかけて取材・構成された調査報道やノンフィクションの記事・書籍を読めるサブスクリプション・サービスです。スマートニュースの子会社であり、調査報道の支援などを行うスローニュース株式会社が運営しています。

今回は、主にデータをビジネスや報道などで扱っている人向けに「データの伝え方」を扱う連載を行うことになりました。内容をざっくり書くと、「データを読んで意味を理解し、適切な視覚表現に落とし込み、データを広く・正しく・誠実にユーザーや読者に伝えるにはどうするか?」を考えるものです(なお11月に衆院選のビジュアル解説記事を掲載していますが、連載としては今回が実質的な第1回です)。

もともと自分自身が独学で作品を作りながら学んできたので、講演などで「どのようにデータ可視化を勉強すればよいか?」と聞かれた時に若干の答えづらさを感じていました。作りながら学ぶ道は確実ですが遠回りでもあり、試行錯誤に時間がかかったり、恥ずかしいミスをすることもあります。そうした遠回りをなるべく避けられるような具体的・実践的な内容にするつもりです。

専門的なデータサイエンス、統計学、装飾デザインの話は(類書もあるので)なるべく抑えて、その前に必要な「データを読む、理解する、ポイントをつかむ、編集する」といった工程を中心に解説したいと考えています。初回はおそらく最も大事な(そして間違えると取り返しがつかない)コンセプトについて書いています。

連載の目的や背景を解説した「はじめに」を以下に転載します:

(以下引用)

この連載では「データを伝える技術」と題して、難解で複雑なデータを読み解き、面白い切り口を見つけ、誇張や誤解を避けつつ適切な視覚表現に落とし込むためのポイントについて解説します。

私は前職の東洋経済新報社で週刊誌(週刊東洋経済)やウェブメディア(東洋経済オンライン)の編集部などに所属し、データ可視化(Data visualization)を活用した報道コンテンツの制作を行っていました。新型コロナの感染状況ダッシュボードである「新型コロナウイルス 国内感染の状況」をご覧になった方が多いかもしれません。

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このダッシュボードは厚生労働省の報道発表をデータソースとしています。独自の情報もなく、最新の速報でもなく、データの解説も載せていませんが、TwitterやFacebookなどで計20万回以上シェアされました。これは2020年に公表された新型コロナウイルスに関する報道コンテンツの中で最も大きな数字です。データ可視化に対する社会的なニーズが強くなっていることの現れだと考えています。

しかしながら、データ可視化をこれから始める方にとって、その流れやポイントを解説した書籍や記事は日本国内に極めて少ないのが現状です。私自身、社会人になってから大学院に留学するなどしてデジタルデザインの勉強はしてきましたが、いざ制作する中で頼りになった書籍などはなく、ソフトウェアエンジニアリング、デザインなどの知識を断片的に得ながら試行錯誤を繰り返していました。そのせいで大きく遠回りをしたり、ミスをしたり、炎上寸前の状態に陥ったこともありました。

この連載は、私が何度も冷や汗をかいて学んだ経験を言語化し、これからデータ可視化を始めたいと考えるジャーナリスト、ディレクター、エンジニア、デザイナーなどがどのような手順・どのような視点でデータを扱えばよいのかを解説します。特に報道分野でデータ可視化プロジェクトに関わる方が、データを読み解いてイメージを紙やペンで表現し、必要に応じてエンジニアやデザイナーに趣旨と明確に伝えられるようになることが目標です。

特に重視するのはデータを読んで視覚表現の方法を検討する、テキストの記事でいえば「編集」に該当するステップです。先述の通り、この分野に関する共有が日本で少ないため、またデータ可視化やデータ報道に携わるのであれば共通して持っておきたい知識であるためです。

逆に、この連載では特定のツールやプログラミング言語の細かな解説はしません。可能な限り専門用語や技術的な解説は使わず、最も上流かつ重要な工程である「データを読んで方針を決めるまで」を中心に扱います。これにより、皆さんが会社でどのツールを使っていても、あるいはどのような制作体制をとっていても、役に立つ知識になるはずです。理想的には5年後や10年後、ツールや言語が移り変わっても通用するポイントを書いていきたいと考えています。

もちろん報道関係者でなくとも、たとえばビジネスや研究活動であっても、データを読んで伝えることの要諦は同じです。「データは苦手」と何となく感じている方が、この連載を読んで克服していただけることを願っています。


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