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『風は遠き地に』第一章にまつわる雑記

 現在、メインで連載させて頂いておりますファンタジー長編小説『風は遠き地に』。30年近く前にちょこっと書いて未完で放置されていた本作が、皆さまのおかげで息を吹き返し、再構築の上公開され、なんともう佳境へ入ろうとしています。ありがとうございます!
 Webでは、特に前書きも後書きも付けずに淡々と本編だけを掲載していて、Twitterの投稿でたまに設定のことなどを語る程度で、細かい説明は全くせず、読者様の自由な読み方にお任せしているのですが、たまに「深い解説が聞きたい」とお声を頂くので、書いてみようかなと。
 そんなわけで今回は、第一章を読んでくださった方向けに、ネタバレありの仕込みネタなど公開する記事となります。まだ読んでいないから知りたくないよ〜という方は、ここから先は読まないでくださいね。
 第一章が既読・履修済みの方は、Webの掲載ページを追うか、紙本があればお手元にご用意の上、ご覧ください。

『風は遠き地に』掲載場所はこちら
📚 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n5601hf/
📚カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16816700428155671702
📚 pixiv https://www.pixiv.net/novel/series/7877578

未完の物語が発見、再構築されて公開されるまでの雑記はこちら↓

プロローグの裏話

 いきなりですが、未完で放置の原案には、プロローグは丸っとありません。紙本のあとがきにチラッと書いたけれど、これは再構築の時に、ごく自然に降ってきた部分。そして全く触れていませんが、ここで啼義(ナギ)は、生まれて初めての寝返りを成功させているのです。靂(レキ)が発見した時にうつ伏せだったのは、寝返り成功後だからです。誰か、褒めてあげて! 頑張ったんだよ! というところですが、みんな知らないので仕方ない。
 片や、啼義を拾った靂は、当時30歳の設定です。姫沙夜(キサヤ)が存命だったならば、無事に結婚し、淵黒(えんこく)の竜などという変な信仰に足を突っ込まず、生家から分けてもらった羅沙(ラージャ)の社(やしろ)で、山の神だけを崇拝し、家庭を築いていたであろう年代。独りになって約3年、姫沙夜と同じ黒髪の赤ん坊だった啼義を放置できず、社に連れ帰ったわけです。
 余談ですが、靂は正妻の子ではなく、妾の子として生を受けています。故に山の神の信仰を柱にする生家を継ぐことは出来ず、父親から分け与えられた羅沙の社の頭となります。プロローグと第一章ラストに登場する、靂の従者の桂城(かつらぎ)は、靂が幼少の頃から、彼に仕えています。

血は繋がっていなくても親子な描写

 啼義(ナギ)と靂(レキ)は当然血が繋がってませんが、17年もの時間を共にしているので、やはり行動のパターンというか、思考の部分で似ている部分があります。
 その要素が仕込んであるのが第一章の第三部<崩壊>。
 自身の存在が社にとって相反するものであることに気づいた啼義は「そうか/ならば」と、靂に自分を始末してもらおうと決意します。そしてその申し出を受けた時、靂もまた「そうか/ならば」と決断をする。ここの言葉は、そういう意味もあって、あえて被せてあります。二人の考えは一致するけれど、結果は、靂の親心が勝る形となりました。
 情が移らないよう、啼義のことは世話係にほとんど任せ、意識して距離を取っていた靂ですが、愛しい姫沙夜(キサヤ)と同じ黒髪、そして妾の子として、いつも遠慮が先に立って前に出られなかった自分と啼義は、どこか似たような部分があり、どんなに離そうとしても、簡単に切り捨てられる存在ではなかったわけです。

ダリュスカインの豹変

 読まれた方は、お気づきになったでしょうか?
 ダリュスカインの一人称は、最初こそ「私」ですが、靂(レキ)を弑してからは「俺」になっています。
 彼はもともと、ドラガーナ山脈の南の、なんてことない村の生まれで、訪れた旅の魔術師が魔物を撃退する姿を見て憧れ、自分も強い魔術師になりたいと、13歳で少し大きな町の魔術学校へ進学します。そこで最速で首席を取るほどの成績を収め、魔術師としての道を歩み始めるのです。
 しかしそうやって単身、町で修行を積んでいる17歳の時、故郷の村が魔物の襲撃を受け、助けに向かった時にはすでに遅く、故郷は全滅していました。帰る場所をなくし、増えている魔物の駆逐を生業にして放浪しているうち、魂を蘇らせることが出来ると言われる、淵黒(えんこく)の竜を信仰している場所──羅沙(ラージャ)の社(やしろ)の存在を知り、山を越えて社を訪ね、あとは第一章に書いてある通り、靂の信用を得てそばに置かれるのです。
 そんな彼は、17歳で家族の絆から引き剥がされ、愛情渇望が激しい内情もあって、靂が、静かながらも啼義へ深い愛情を持っていることを見抜いていました。啼義も自分と同じように身内がいないんだと同情しつつも、靂がいるじゃないかという歪んだ思いは常にあって、靂がいる間は態度にこそ出ていなかったわけですが、その制御がなくなったことで、嫉妬の思いが全面に出て、啼義に対しての憎しみも全開になります。この辺の彼の心情は、第二章で如実に描かれていますね。

おまけ:物語の舞台エディラドハルドの由来

 さて。真面目に書いてきた最後に、かなりどうでもいい仕込みネタを。
 物語の舞台となる大陸、エディラドハルドのことです。
 名前長いし! そして、第一章ではほとんど和風な漢字名が多い中、大陸の名前は洋式という、謎の雰囲気を醸し出しています。一体この名前、どこからアイデアが来たの?
 エディラドハルドは、アルファベット表記で書くとEdyradohaldo。スペイン語っぽいですね。旦那氏の母国語がスペイン語だからっていうのは、全く関係ありません(笑)。でもスペイン語が入っているのは確かで、実は中に、El dorado<エルドラド/黄金郷>という単語が隠れているんです。
 ファンタジーは私の黄金郷である、という意味ももちろんありますが、昔からの仲間にこれを話すと、「ああ、聖飢魔IIだよね」と言われます。白状しましょう、その通りです(爆)。作者は高校時代から大学まで、創作もどっぷりでしたが、ハードロックに目覚め、聖飢魔IIの悪魔教漬けでもあったのです。そして、『風は遠き地に』の原案を書いた時期は、その中にしっかり収まります。なのでその空気感というか、世界観は、だいぶ影響されてるんじゃないかな。…って、過去みたいに言ってるけど、これまた何のタイミングか、再構築入った傍らで、彼らの再集結が長引いて新譜大教典まで出るという事態になり、なんかもう、因縁めいたものを感じてます。新譜大教典ヘビロテしてます、ありがとうございます(ただの信者的発言)。

 そんな、遥か30年近く前からの自分の趣味性癖を詰めに詰めて、『風は遠き地に』は現在第四章まで公開中。皆さまの色々な反応や感想、FAなど、どれもとても励みになっています。本当にありがとうございます!
 第二章の仕込みネタも…あったかなぁ。これはけっこう、読んだままかも。でも、また思いついたら書きます。
 ご拝読、ありがとうございました。

<『風は遠き地に』は以下で連載中>
📚 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n5601hf/
📚カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16816700428155671702
📚 pixiv https://www.pixiv.net/novel/series/7877578

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