ROIと意味について

Written on Feb 9, 2021

要点整理
(1) 人は自分がEffortをかけて作ったものにより価値を感じる。そして、周りの人も自分と同じくらいそれに価値を感じているだろうと感じる。逆にEffortがなさすぎると価値を感じない。
(2) 目の前でEffortを消されるとやっていることに対する価値とMotivationが減る。逆にやっていることが誰かの役に立っていると感じると価値が高まる。
(3) Effortに対する自分が感じる価値と自分が思う他者が感じるであろう価値は同じである。だが、実際には他者の感じる価値にはばらつきがあるし、その人が作っていないという意味において感じられる価値にも限界値があるのかもしれない。このギャップが大きいほどEffortを消されるような感覚に繋がり、自分自身が価値を見出せなくなる、Motivationが下がるということなのではないか。価値を感じられる最低限のEffortで、他者への価値が最大化される部分がSweet Spotなのかもしれない。ここには方程式がありそう。

本文
前に人はROIを意識して動いているんじゃないかと言っていたけど、やっぱりそれだけでは不十分だと言えて、おそらくROIに加えて自分の行うことにどれだけ意味を見出せるか、さらにいうと、自分の行うことがどれだけ誰かにとって意味があると思えるかを見ているんじゃないかと思った。

これは以前読んだ不合理だからうまくいくか何かの本で書いてあったけど、Dan Arielyさんの行ったLEGOの実験を思い出した。LEGOのおもちゃを学生に作らせて、一体作るごとにもらえる対価が少しずつ減らす場合、人はどれくらい作り続けるのかという実験だけど、一方のグループでは作ったらその作られたものを保管して、もう一方のグループでは作った目の前でそれを解体して、その人が新しいLEGOを組み立て終わったら、その解体したもので新しいものを作ってもらうというもの。

結果的に人は目の前で努力を消されると意味を見出せなくなってしまう。仮に人が経済合理性だけで動くのであれば、報酬条件が同条件であれば結果は同じになるはずなのに、こうした違いが生まれるのは、やはり人が自分の行うことにどれだけ意味を見出せるかという部分が大きいということなのかもしれない。つまり、ROIのR (Return) に意味の要素が入っていると言える。

Management側で言えば、こういった努力を認めて、承認し、Inclusion, Connectionを感じさせることで個人のPerformanceを最大化できるということであり、また、逆をいうと些細なことで人はMotivationをなくすということでもある。

また、面白いのがCake Mixの例で、市販の粉に水を入れて焼くだけでケーキができるものだと人は簡単すぎてそこにConnectionやEffortを感じられなくて、自分のものではなく、誰かのものと感じる一方、そのCake Mixから卵と牛乳の要素を除いて、それをUserに自分で加えさせるというステップを追加するだけで人は自分のものだと感じるようになる。良くできている。

そして、別の折り紙の例でもあったけど、人は自分の作ったものにより価値を感じる傾向がある。そこにはEffortに加えてConnectionもあるからだろう。そして、何よりも面白いのは、その作った人は周りの人も自分と同じくらいそのものに価値を見出すだろうと勘違いしていることと、そのEffortの量が高まれば高まるほど、その作った人とただ客観的に価値を評価する人との間にある差が拡大するということ。これはかなり興味深い。もちろん全てが全てそうとは限らないだろうし、ものによると思うけど。

Startupが自分たちで相当にEffortして作ったものほど、価値を信じ切っているパターンがあるけど、そういうものほど刺さらず終わるということになる可能性もあるということである。客観性を保つことは大事である。

結局全ては、EffortとMeaningのバランスで、Effortがなさすぎても自分のものだと思わないし、そう思わなければそこに価値を見出しにくくなる。一方で、Effortが大きくなればなるほど、価値を見出せやすくはなるけど、その自分の感じる価値と客観的な価値が乖離し始める。時代はEffortlessかもしれないけれど、Zero-effortではダメ出し、Effortに対するMeaningの割合は一定数保っていなければいけない。この割合は時代や習慣で変動するものである。そして、このMeaningを拡張するのが他者への貢献感でもあると思っていて、自分だけのためよりも、そこに誰かのためという要素が入ると、見出す価値の量も上がるのではないか。InclusionやConnectionに繋がってPerformanceが上がる例につながる。実際に周りにどれだけ価値があるかは別の話としても、本当に価値が釣り合っていれば、Effortに対する価値の乖離は起こらず、Meaningだけを伸ばすことができる。

自分はここにまだまだSocial Appの可能性が隠れていると思う。これまでAdam Smithのように効率だけが重視され伸ばされてきたBtoBまたはPersonal ToolのようなProductivity ToolまたはProfessional Toolほど、それをおもちゃ化して、Socialの要素やCollaborationの要素を入れたら面白いことが起きるんじゃないかと思う。なぜならEffortlessはある程度担保されているから、そこでMeaningの要素をフォーカスして押し上げることができるから。

いつも支えてくださりありがとうございます!