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『cheri』~by 三宅正哲

代官山の駅を西の方角に歩いて約5分
路地を入ったところにある、三宅さんの美容室 cheri
昨日伺って、三宅さんの世界を聞いてきました

僕の中での認識は昔から、美容師という仕事は、
もっとも人の身近にいるアーティストだった
でも今回話を聞いて、そんな単純じゃなく、さらにその先にあるものだと思った

今現在、美容師の数は約20万人
確かに、中には高校を出た後に行くところがなく、とりあえず美容の専門学校へ、という人を僕は何人も見てきた
割と簡単に慣れてしまう職なのである
そしてそれは三宅さんも言っていたしよく聞く話だ

しかし僕が驚いた点は、それだけいる中で、40歳以上の美容師は
何と約6%しかいないという事だ
それはつまり、始める事でなく、続けることの難しさを物語っている

なぜ辞めていくのだろう
これだけ美容室がありとあらゆるところにある中で、働き場所なんかいくらでもあるんじゃないか
その疑問をもちながら三宅さんの話を聞いていた
するといろんなことを聞く中でこの業界のイメージが、端っこでも沸いた気がした

大枠はこれである
多くあるからこそ自分が目立てない
そして、それほど好きでなく始めた人は真っ先にやめ、好きで始めた人でも客がつかないと続けれない
実際、現実問題、顧客をいかに持つかは、想像以上に難しいらしい

ではなぜ顧客がつく人とつかない人にそれだけの差があるか
(40歳以上でつく人とつかない人は、6:94という事だ)
その答えは、三宅さんの美容室に行き、髪を切ってもらい、話をしているなかで明確に出ていた

「光井君、僕はね、髪を切ることはもう仕事だと思わないぐらいなんだよね」
「美容師としてやっていることは、手先を動かすだけだからね」
「でも毎月同じ人と会って、しかもそれがいろんな分野の人で、ここでだから聞ける話を聞いてたら、自分の知ってると思ってた世界がいかに狭かったか実感させられるよね」
美容師を長く続けていると、小説のように人の月日が分かるらしい
小さいころから来てくれてた子が大人になるまでの様子を、毎月ドキュメンタリーのように見る、
そして、ありとあらゆる相談を受け、誰にもできない話も、あの場なら聞ける
cheri は三宅さんにとって家同等と言っていた
お客さんが来る事は、家に人を呼ぶ感覚でわくわくする
作る際に、フランスのホテルをイメージして、非効率にもかかわらずカウンターは大きめに作り、髪を切る場ではタブーな絨毯もあえて敷いたそうだ
さらにその家の中では、視線は下に行くようにできている
ソファーやイスを低くし、シャンデリアも下の方に着け、床は木目調
おいてあるインテリアは、すべて誰でも買えるものだけだそうだ


これが答えだろう


三宅さんは何も髪を切る事だけを目的としてきたわけではないのである
そこで出会う人を愛し、その人生を愛し、その空間を心から愛している
そしてその人への一つのかかわり方として髪を切っている
これが差なんだと身をもって感じた

例えば取材や賞、それを三宅さんは残さないらしい
ホームページにも一切過去のカットは載せていない
僕はそれを聞いた時、かっこいいと思ったが、同時に少しもったいない気がした

でもその僕の後者の感情は間違いだと後でわかった
そりゃそうだ
あの時間の価値がホームページで、ましてや過去の写真なんかで伝わるはずがない
立場上多くの美容師を見てきたし、多くの美容師に様々な場面でおせわになったが、cheri に行き、初めてその価値観が変わった

美容師が好きで得意とするものは、髪を触ることである
でも三宅さんの見つめているものは、その人自身であり、その空間であり、その時間である。髪を切りながら。

間違ってるかもしれないが、僕にはこう見えた
そして心底6%に納得できた

僕は自分がアーティスト兼デザイナーをしていて、昨日のこの時間、とても革新的な新たな価値観を感じた気がする
僕が作るものはあくまで作品であり、それ自体が主体である
しかし、三宅さん曰く、美容師はアーティストでもデザイナーでもない
それと同時にアーティストでもありデザイナーでもある
僕がそう捉えただけかもしれないがw
要するに、毎朝各々がアートを作るためにデザインする
一度作られたものに手を加えるという概念がない僕の作品からして、それは新しい価値観である

僕の説明じゃ舌足らずなところがあるかもなので
是非、各々が生で三宅さんのその世界を体験してほしい

なんか最後宣伝みたいになったけどw

今回は、僕が今とても興味がある人の話でした

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