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カエルの少年

宇宙にはいろいろな星がある
時間にはいろいろな線がある
世界にはいろいろな命がある

宇宙の彼方で存在するシキの星で
神様と人間が共存する世界に
ウキという神様がいました

ウキは恵みの雨を降らせる神様でした
作物を育て、森を癒し、人々の糧に
必要な存在でした

しかしウキは人々から感謝もされず
嫌われていました

人々にとって雨が降るのは当たり前のことでした

だんだんと雨が降って笑う人は少なくなりました

そして悲しいことに雨が降ることよりも
降らないことが望まれました

地上に遊びに行っても他の神様よりも悪口を言われました

ウキは神様である意味がないと考えはじめて、ついに神様をやめようと思いました

最後にウキは地上に雨を降らせました

ウキは優しかったのでしばらく降らなくても人々が生活できるくらいの雨を降らせました

なんとなく地上の人々の反応を見ました

なんで見たのか分かりません

人々全員に悪口を言われてると思っていました

しかし1人だけ雨の中笑っている少年がいました

もうとんでもなく笑っている少年がいました

少年は雨が降る中、濡れることもお構いなしに走り回っていました

ウキは空から地上にいる少年を観察しました

どうせ毎日雨だったら嫌になるだろうとウキは思いました

ウキはそれから1週間雨を降らせました

それでも少年は平気でした

むしろさらに元気になっていました

なんでそんなに元気なんだろう、普通は嫌がるのにとウキはムキになりました

ウキは1カ月雨を降らせました

さすがにもう嫌になっただろうとウキは思いました

しかし地上を見ると少年は相変わらずすごく元気でした

ウキはもう降参して少年に尋ねました

「おい、少年。なんで雨が降ってるのにそんなに元気なんだい?」

ウキに話しかけられた少年は驚きつつも笑って答えました

「雨が降ると元気が出るんだ!きっと前世の僕は蛙だったんだよ!」

ウキは久しぶりにそんな嬉しいことを言われたので涙が出てしまいました

少年は神様のウキを泣かせてしまったことに慌てました

側から見たら子供にあやされる神様という不思議な光景でした

それからウキは毎日少年のところに遊びに行きました

少年はウキを見ると屈託のない笑顔で迎えました

ウキと少年の頭上だけに雨が降り、2人はとても楽しそうに踊りました

ある日のことです

ウキはいつも通り少年のところに遊びに行きました

でも少年は現れませんでした

今日は何か用事でもあるのだろうとウキは思いました

しかし少年は次の日もその次の日も現れませんでした

ウキは少年の身に何かあったのではないかと心配になりました

ウキは少年の住む村の人に少年の事を聞きました

村人は言いました

「あの少年かい、数日前に亡くなったよ」

ウキの心臓が一瞬止まりかけました

冗談だと思い、他の村人に聞いても同じことを言いました

少年はどうやら病気を患っていて、いつ死んでもおかしくなかったようでした

本当はベットで横にならないといけない状況だったけど、少年の希望でウキと遊んでいたようです

ウキは自分を責めました

自分は神様なのに自分のことばかりで少年のことを何一つ知らなかったことに後悔しました

少年はいつもびしょ濡れで元気そうだったけど、ウキと会うごとに病状を進行させていたことに気付きました

ウキはわたしと会わなければ少年はもっと生きられたかもしれないと思わずにはいられませんでした

そう考えると、涙が溢れて止まりませんでした

ウキが泣けば泣くほど地上に雨が降り続けました

他の神様が何度もウキをなだめましたが、泣き止みませんでした

地上の人々の不満がどんどん膨らみました

神様たちは人々の機嫌を取るためにいろいろな恵みを与えました

ウキはそんな世界を見て心の糸が切れた感覚を感じました

気づいた時にはそんな世界を見捨ててウキは神様をやめていました

神様をやめるとは人間で言う死ぬことと変わりません

一度神様をやめれば二度と神様になることはできません

ウキと少年がいた世界から雨がなくなりました

そのあとその世界がどうなったのか分かりません

数百万年の時を超えて

宇宙の彼方にある地球で

人間が神様を信じる世界に

レインと呼ばれる少女がカエルを飼っていました

少女はカエルをとても大切に可愛がっていました

友達になんでカエルが好きなの?と聞かれるといつもレインはこう答えました

「カエルは好きじゃないけど、この子をはじめて見た時からはじめて会ったとは思えなかったの。きっとわたしの前世はカエルだったに違いないわ」

少女とカエルは仲良く暮らしました

おしまい

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