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発信力よりも「返信力」を鍛えよう

SNSで発信力は鍛えられたけど、「返信力」がおざなりになっている気がする。

という直感(自戒込み)。

スマホで写真を撮るのも、インスタのストーリーも、ボタンひとつで「発信」は瞬時にできる。けど、他人への「返信」はテキストで打って返す分、微妙に手間がかかり、ついつい後回し。

で、結局返すのを忘れるケースって、メールでもSNSでもありそうです。だからこそ、「丁寧に返信(リアクション)できる人」の価値が、今けっこう高いんじゃないかなと感じてます。

◾️私たちが「発信者」になったのも、つい最近

そもそも、有名人でない私たちが「発信」するようになったのも、最近の話です。

2006年のタイムズ紙で「今年の人(Person of the Year)」に選ばれたのは「あなた(You)」でした。テイラー・スフィフトや米大統領と肩を並べて、時代を象ったのが無数の匿名人。YoutubeやFacebook、Wikipedia等のプラットフォームで、「あなた」主体のコンテンツが大量に出回ります。

それでも当初は、ネット界隈の人らが中心でした。しかし、2010年代を通してスマホが普及し、社会のインフラと化したことで、文字通り「誰でも」発信し出します。

インスタにストーリー機能がついたのも2016年。24時間で消えて、友達同士の公開設定にもできる。投稿のハードルがより一層下がった結果、今やあらゆる人が写真や動画で、「私の一日」を発信します。

ここ十数年あまりで、急速に「普通の人」が「発信者」に(気がついたら)なっていった。その性急な移行もあって、発信への過熱が高まる一方、「返信」の価値がちょっと取り残されたように思う。

◾️主従における「従」の役割

オペラやバレエが舞台として成り立つのも、「観る」ことに長けた観客がいてこそ。演者(player)に対しての「観客(audience)」の隠れた役割を、哲学のカフェを運営する東浩紀さんは語っています。

いわば「主(発信する人)」と「従(返信する人)」がいた際、「従」の役割をもっと見直すべきではという提起でもあります。

「リアクションできる人」が生み出す効果

チームでパフォーマンスを残せる人、というと、力強いリーダーシップを発揮したり、鋭いアイデアを述べる人等のイメージがあります。

間違いではないですが、もっと評価されてもいいのは「積極的にリアクションを取る」人です。興味深い意見や、奇抜な考えを言う人がいても、それを明確に「反応」する人がいてこそ、次の議論に円滑さが生まれる。

「フォロワーシップ」がリーダーシップを上回るという、著名な話です。誰かが新たに運動(movement)を起こすとき、一人だけだと奇妙がられる。

しかし、その一人目に「反応」して、誰かが勇気を持って二人目になる。すると、三、四人目が引き続き現れて…。次第には大きなうねりを生み出す。

「アクティブにフォローできる」人が、組織・チームに必須であること。このポジションの役割は軽視されがちですが、心理効果的にも「聞く人」の存在が多大な価値をもたらしてることは、諸研究からも見逃せません。

◾️返信で信頼(responsible)をつくる

やや話が遠回りになりました。要は自分が主体となって「発信」すること以上に、「返信」の隠れた役割をもう少し意識してみよう、ということです。

職場のコミュニケーションでも、普段のSNS上でも。「常にちゃんと細やかな反応/リアクションをくれる」人って、けっこう周囲から信頼されていませんか?

友人・知り合いとのやり取りでもしょうちゅうですが、「相手の要求に応えてリプライしたはずが、その当人から一切返事が返ってこない」ことが割とよくあります(あるいは返事が来ても、数週間後とか一ヶ月後とか)。

友達だからいいかなと心に留める反面、どこか雑だなと本音に感じてたりもします。ある起業家のモットーが「メールは必ず自分の返信で終わらせるように」ですが、周囲の信頼を着実に得ている人は、小さなリアクションを徹底させてる印象です。

社会人からすると一見当然で、簡単にできそう。でもこの「当たり前」を普段の生活でも実践できてる人は、意外と多くないのかも。

適切に返信(response)ができる(able)人は、責任が重く、重要な役目を任せられるほど、信頼できる(responsible)。便宜的な喩えですが、記者からの問いかけに答える、官房長官の答弁のようでしょうか。自らの休暇を優先させたいあまり席を外したり、相手の質問に答えるのを面倒くさがるようでは、responsible(=返答可能)なポジションには至れません。

信頼って、一方通行的な「発信」コミュニケーションだけだと、実はあまり築けてないように思えます。

それで得られるのは「認知」であって、信頼へと昇華させるには、応答を丁寧に積み重ねた、双方向型のコミュニケーションでないと、結局は難しい。

ということで、「アクティブに発信する」に目が向きがちな昨今、「アクティブに返信する」をもっと心がけたほうが、些細なことでプラスな効果を生めるんじゃないかと思います。

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