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腰痛を楽にしたいなら、むしろ運動するべき理由【科学的に正しい腰痛対策】

今回は、腰痛を楽にしたいなら、むしろ運動するべき理由を解説します。

安静にするよりも運動をした方が痛みが改善することがわかっています。(1)

運動療法は、腰痛診療ガイドラインにおいても、手術と薬物治療を除き、最も信頼のおける治療であることが明記されているのです。(2)

実際に私も、薬局ではよく腰痛に悩む患者さんの話をよく聞きます。薬を飲んでも一時的で、またすぐに痛みがくるようです。痛くて外に出る気分にもならず、家で座って過ごすことが多いといいます。

そんな苦しむ方達に、
なにか手を差し伸べられないか?

湿布や痛み止めを調剤して、
お渡しするだけで良いのか?

今回は、そんな科学的に正しい腰痛対策として、運動療法を紹介します。

運動の効果は?

運動療法は腰だけでなく、さまざまな長く続く痛みを改善してくれます。

例えば、関節リウマチや変形関節症、月経困難症などです。

関節リウマチとは、関節が炎症をすることで、骨や軟骨が破壊されてしまう病気です。
女性に多い病気です。
変形関節症は、関節の中にある軟骨がすり減り、スムーズに動かなくなる病気です。
月経困難症は、月経期間中に起こる病気です。

いずれも、長く続く痛みを伴う病気になります。

慢性的な痛みに対して、運動がどれくらい効果があるのかを検証した研究があります。

予防や治療について、精度の高い研究を取り扱うコクランが2017年に実施した研究です。(3)
この研究では、12週間以上なんらかの痛みを抱える18歳以上の1万9,642人が対象でした。彼らは関節リウマチや変形関節症、腰痛、月経困難症などで苦しんでいる人達です。

そんな1万9,642人は、さまざまな運動療法を行いました。

例えば、ウォーキング、ジョギング、ランニング、サイクリング、水泳などの長時間継続して行われる有酸素運動
ストレッチやダンベル、ゴムバンドを使った筋トレ
モーターコントロールエクササイズと呼ばれる、いわゆる体幹トレーニング
不安定な足場でバランス感覚を養う、バランストレーニング
なかには、太極拳ヨガピラティスもありました。ピラティスとは、ヨガをよりリハビリテーション向きにした運動です。

これらの運動を少なくとも週に2回、45分から60分、実施してもらったのです。

研究は、痛みがどれだけ少なくなったかを自己申告で報告してもらっています。
歩行や屈伸などの身体機能、心理的は影響なども一緒に調査しています。

それでは、結果です。


自己申告での痛み

運動療法を行うことで、運動前と比べて痛みが改善していました。

痛みの改善具合は、0〜100点で評価されます。
例えば、全く痛みの改善がないなら0点。痛みがなくなったのなら、100点です。

痛みが大きく改善した人たちは、痛みが30点少なくなりました。ほとんどの人は、運動により10〜20点の痛みが減ったと報告しています。

効果がなかった人達もいますが、痛みが悪化することは決してなかったようです。

つまり、痛いなら安静するのではなく無理のない範囲で動かすこと。

これが科学的に正しい方法です。


身体機能(歩行、屈伸、など)

運動によって、わずかに身体機能は改善しました。

今まで歩行できなかった人が歩けるようになった、といった大きな改善効果はありません。しかし、落ちていく一方だった身体機能が改善するのを考えると、運動療法は大きな価値があるといえます。

ただし、関節リウマチの研究の一部では、効果がなかったとするものもあります。


心理的機能とQOL(生活の質)

運動療法によって、変化はありませんでした。
ただし、悪化することはありません。


有害事象

運動療法をすることで、何がデメリットがあったかを調査する項目です。
結果は筋肉痛などの痛みがほとんどであり、しばらくしたら治ったとしています。


まとめ

以上、慢性的な痛みに対する運動療法の効果でした。

痛みの改善、身体機能の軽度改善が期待できそうです。心理的なストレスや生活の質に変化はありませんが、悪化することはありませんでした。

つまり、運動療法によるデメリットはないということです。3ヶ月以上続く痛みで悩んでいる方は、これを機会に運動をしてみると良いかもしれません。

運動の種類はどんなものでも構いません。

できる範囲で、無理のない運動から始めてください。
主治医の先生や、いつも通っているリハビリの先生に相談してみるのが一番良いと思います。

皆さんの痛みが少しでも楽になるよう、応援しています。


補足として、腰痛の中にはすぐに治療を行う必要があるものがあります。

悪性腫瘍だったり、感染性であったり、骨折ひどい痺れを伴う痛み(下肢麻痺、ヘルニア腰部脊椎管狭窄症など)です。(2)

このような病気を放置してしまうと、取り返しがつかないことになりかねません。
まずは一度、病院にかかられるのをオススメします。

それでは、また次回の記事もよろしくお願いします。


参考文献

(1) Hayden JA, van Tulder MW, Malmivaara AV, Koes BW. Meta-analysis: exercise therapy for nonspecific low back pain. Ann Intern Med. 2005 May 3;142(9):765-75. doi: 10.7326/0003-4819-142-9-200505030-00013. PMID: 15867409.

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/0003-4819-142-9-200505030-00013?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

(2) 腰痛診療ガイドライン2019年

日本整形外科学会•日本腰痛学会

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf

(3) Geneen LJ, Moore RA, Clarke C, Martin D, Colvin LA, Smith BH. Physical activity and exercise for chronic pain in adults: an overview of Cochrane Reviews. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Apr 24;4(4):CD011279. doi: 10.1002/14651858.CD011279.pub3. PMID: 28436583; PMCID: PMC5461882.

https://doi.wiley.com/10.1002/14651858.CD011279.pub3

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