教員がうつ状態になるまでの記録4 他人に対する漠然とした恐怖心

 この20年くらい、なぜだかわからないけれど、他人に対して恐怖心があった。自分がちゃんとしていないといけない、ちゃんとしていなければ他人から劣等生と思われてしまう、みたいな強迫観念に由来したものだったのかもしれない。徐々に徐々に、その認知のゆがみはエスカレートしていき、ついには、自分とまったく関係のない人に対しても、恐怖心を持つようになっていった。電車で隣にいる人が怖い。電車が混んできて、他人が近くにいる状態がストレスに感じる。特にここ5年くらいはそんな状態だった。パーソナルスペースというか、他人との物理的な距離というか、これを広く取らないと、とにかくストレスだった。狭い飲食店や、混んでいる場所もとにかく辛くて、苦手だった。
 他者が怖い、他者は自分に危害を加えてくるようなことはまずないと理解してるのだけれど、それでもとにかくなぜか怖い。そんな認識なものだから、毎日、家から出るのがすごくストレスだった。そしてそのような精神状態が日常化してしまっていたため、当時の自分には、自分が強いストレスを感じていることさえよくわかっていなかった。なぜだかわからないけれど、毎日すごく疲れる。普通に過ごしているだけで、なぜだかとてもつらい。そんな感じだった。
 いま思えば、それだけ恒久的にストレスのかかった日々を過ごしていれば、そりゃあうつ状態にもなるよなぁ、という感想が出てくる。
 その後、抗うつ剤(セロトニンを増やす薬)を飲むようになってからは、そのストレスがだんだん減ってきたように思う。他者に対する漠然とした恐怖心が減ってきた。見ず知らずの他者が敵ではなくなった。外出するのは、いまでもそんなに前向きではないけれど、電車に乗るのも、職場で働くのも、コンビニに行くのも、他者が近くにいても前ほどに強いストレスを感じなくなってきた。心の平穏が保たれている。心の平穏が保たれた状態で活動できることが、これほど楽な事とは思わなかった。
 以前なら、恐怖とストレスでくたくたになっていた脳の機能に、今では余裕が出てきたような気がしている。うつ状態で、特定の仕事ができない現状は変わりはないのだけれど、得意で好きだった仕事については、以前よりもアイデアがよく出てくるようになってきた。脳のリソースが開放されたような感じがする。
 このさきも、良くなったり悪くなったり、波はあるのだと思うけど、心身も、生活のしやすさも、少しづつでも良くなっていくといいなと思う。

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