月刊テキストマイニングレポートVol.29:「ツイフェミ」とは誰か

本稿は、「コミックマーケット97」第2新刊『月刊テキストマイニングレポート総集編2 続・ツイッターにおける女性差別に関する考察』の第3章として書かれたものです。

3.1 はじめに

本書のまえがきでも採り上げた荻野稔などが使っている概念として「ツイフェミ」なる言葉がある。この言葉は、私が見た限りにおいては、「ツイッター」と「フェミニズム」を合わせた造語であり、主に「(男性)オタクや(男性)オタク向け表現をバッシングする”正しくない”フェミニズム、ないし男性嫌悪」という意味があるように思えるが、ただ概念としてはふわっとしたものであり、この言葉を振りかざす側も正直わかっていないのではないかという印象である。そこで、前章の手法を用いて、この概念についても見ていきたい。

画像1

3.2 ツイートの取得

ツイートは、前章と同じように、フリーソフト「R」のパッケージ「twitteR」を使い、2019年12月12日に、下記のようなコマンドを入力して行った。

data01 <- searchTwitter(searchString=iconv("ツイフェミ",from="CP932",to="UTF-8"),n=100000,since="2019-12-03",until="2019-12-10")
data01 <- twListToDF(data01)
dat <- data01
write.csv(dat,"report029_basedata.csv")

これによって取得したツイートは9,629件となった。表3-1に一覧を示す。もっとも多く観測(リツイート)されたツイートは、2019年11月に発売された「ポケットモンスター ソード/シールド」のネタ画像であった。その他を見ると、この概念を使う人は、彼らが「ツイフェミ」と呼ぶ存在について、このように考えているということがわかる。

反差別主義の人達も、最初は良かったが、そのうち本当の差別者に向き合うのではなく、気に入らない人を差別者認定して回って嫌われていった。ツイフェミと呼ばれる人達も、表現叩きに精を出し、批判者が女性なら「名誉男性」認定し回るだけ。過激なやり方で敵を増やせば、バッ…(全体2位、283件)
伸びてるから紹介。グロ画像とまでは行かなくともこんな発言するフェミは沢山見てきた。他にも創作物に対して難癖をつけて規制やゾーニング要求と今のツイフェミは暴走が過ぎる。でも俺はフェミニズムその物には賛同してる。だからフェミニズムに風評被害…(全体8位、131件)
今、誰もが子供達を守りたいと考えている。ならば自分の欲求を果たす為だけに、無関係の創作物をお気持ちで焼いて良い訳がない。 現にツイフェミと呼ばれる方々はこのような時にも戦闘を仕掛けてくる。彼らはかつての女性解放運動から膨れ上がり、逆らう者は全て…(全体10位、107件。荻野稔)

このように、彼らが「ツイフェミ」と呼ぶ存在は、自分の気に入らない人を差別者認定する、創作物に難癖を付けてくる、といいう認識を持っているようである。他方で、この概念に対する批判も多数観測された。

ドレスアップとかした時に「フェミニストじゃない!」とか言ってくるような人になんて本物のフェミニスト認定されなくていいしツイフェミでいいし日本のフェミニストでいいしその人にとって偽物のフェミニストでいいしその人にとって頭悪くてもいいわ。頭いい…(全体3位、253件)
石川さんの "これフェミ" 以降、反フェミ勢がツイフェミに声かけて対談企画しまくってると知ってドン引いてる。さらに対談相手に女子高生や未成年に声かけてるらしくてドドドドン引き。 無報酬で無責任なイベントに未成年に声かけて使うって、ほんとロクでもね…(全体6位タイ、172件)

このようにして見ると、むしろ「ツイフェミ」なる概念を振りかざす人のほうが、フェミニズム的なことを言う人たちを「似非=ツイフェミ」認定している、と言ったほうが実態として正しいとも言える。ちなみに全体6位タイのツイートにある「これフェミ」とは、2019年11月16日に行われた、「#kutoo」運動の石川結実と、「表現規制反対派」の論客である青識亜論の対談イベントである。このイベントについて、司会者の小保内太紀が速報的な記事「青識vs石川イベント 感想殴り書き」( https://note.com/noteobonai/n/n87e7c9ac557d )をnoteに書いているが、石川にも問題があったが、青識については相手の揚げ足を取るような論法をしたり、さらには(ほとんどが青識のファンと見られる)観客を煽っていたりというものがあったという。

3.3 「ツイフェミ」概念を振りかざしているのは誰か

「ツイフェミ」という文字列を含むツイートをしたアカウントの中から、1,500アカウントを完全無作為抽出によってサンプリングし、使用されている単語の傾向から、前章と同様、Jaccard係数を用いてウォード法でクラスタリングを行った。クラスター別の集計結果と共起ネットワークを見ると、「ツイフェミ」概念に肯定的なのはクラスター2、批判的なのはクラスター4と見られる。

各クラスターと「ツイフェミ」という単語を含むツイートの共起

report029_ベース分析_共起ネットワーク_クラスター

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