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1on1を13年間やり続けてみてわかった、1on1のベストプラクティスをチェックシート化してみた

こんにちは。株式会社fruor COO(Cheif One on one Officer)の上林かずえと申します。

ここ数年で急速に広まった1on1ミーティング。あなたは、実施したこと・されたこと、ありますか?
わたしが初めて1on1を行ったのは、星野リゾートで人事をしていた13年前(当時は1on1という呼び方もなかったけれど)。わたしがいた施設は再建真っ只中の大変な時期で、わたしはぴよぴよの新米人事で、従業員のみなさんのしんどい思いをとにかく一生懸命聴いていたのを、よく覚えています。

その後、現場のマネージャーとして、時には社外のキャリアコンサルタントとして、1on1を実施し続けること13年。最初は口が重かったり自信なさそうにしていた人が、花開くように生き生きと活躍していく変貌のさまを、何百人と見てきました。

この13年を経てわたしが言えることは、「1on1はセンスではなくスキル」だということ。1on1にはベストな流れがあり、必要なスキルは7つに分解できる。それらをちゃんと学べば、誰でもいい1on1ができるようになる、ということです。

今回、アドビさんの「みんなの資料作成」企画への参加という良いきっかけをいただいたので、1on1のベストプラクティスを、誰でも使えるカンタン資料としてチェックシート化してみました。

1on1を実施する立場の経営者・マネージャーの方、1on1を組織に定着させたい人事の方はもちろん、人の成長を支援するすべての方に使っていただけたら幸いです。

1.そもそも1on1ってなに?

最近、1on1というワードがいろんな文脈で使われるようになってきて、「つまり1on1ってなんなの?」となっている方も少なくないと思います。なので、チェックシートをご紹介する前にまず、本記事での1on1の定義を書いておきますね。

1on1は、チームリーダーとメンバーが一対一で定期的に行う個別面談のこと。大原則として、リーダーのための時間ではなく、メンバーの気づきと成長のための時間です。

(わたし自身はキャリア支援の専門家という立場で社外1on1を行うこともありますが、基本的には、「社内のチームリーダーとメンバー」という顔ぶれを前提とします。)

米国シリコンバレーのイケイケ企業の多くが1on1を実施しており、日本では2012年にヤフーが導入して以降急速に広まって、今では国内の7割の企業が1on1を行っています。あっという間の7割。すごい浸透度ですよね。

なぜこんなにもてはやされているかというと、「個の時代」の到来により、会社と個人は選び選ばれる対等な関係になってきた、という社会背景があります。

転職が当たり前となり、働き方は多様化し、ビジネスパーソンが働く場所を自律的に選べるこの時代。それでも自社を選び続けてもらい、かつ高いパフォーマンスを発揮し続けてもらうには、従業員エンゲージメント向上が必須事項です。(従業員エンゲージメントとは簡単に言うと、このチームに貢献したい!仕事にやりがいがある!と思っているかどうか。)

そのためには研修などの画一的な施策ばかりでなく、個別で・かつ現場でアプローチできる1on1が非常に有効と支持されているのです。

1on1がうまくいっている組織は高いパフォーマンスを出し続けるが、1on1がうまくいっていない会社はいい人材が定着しにくい。そんな時代になってきています。

※ちなみにエンゲージメントと組織パフォーマンスの相関性は調査結果でも立証されており、米Gallup社の調査結果では、エンゲージメントが高い組織は低い組織と比べて生産性が17%、利益ベースでは21%上回ることが分かっています。エンゲージメント、めちゃくちゃ大事。
【参考】企業の戦略的人事機能の強化に関する調査(経営力強化に向けた人材マネジメントに関する提言および先進企業事例)

2.イケてる組織がやっている1on1の共通点

そんなわけでとっても大事な1on1ですが、あなたは「1on1がうまくいっている」という話や事例を見聞きしたことがあるでしょうか?

残念ながら、以下のような社員の声をよく聞くのではないかと思います。

「特に話したいこと、ないし…」
「本音を話しても、どうせ何も変わらない」
「時間の無駄だからやめてほしい」

そう、7割の企業が導入しているとはいっても、そのほとんどが「形だけ」になっているという実態があります。ああ、もったいない。
マネージャーたちも、メンバーの話をぜひ聴きたいという気持ちがあっても、こんな逆風を感じ取れば、途中で心が折れてしまうかも…。

では、こんなネガティブな声が聞こえてこない、常にハイパフォーマンスなイケてる組織はどんな1on1をやっているのでしょうか。
実は、いい1on1を実施している人・組織には、以下のような3つの共通点があります。

①対話の展開の仕方・対話の基礎スキルが身についている
②相手に合わせて対話スキルを使い分けることができている
③1on1の長期的なデザインができている

今回配布するチェックシートは上記の①にフォーカスし、どんなチームにおいても必ず押さえるべき対話のポイントを15に厳選して作りました。

以下からダウンロードできるので、ぜひお役立てください!

3.1on1ベストプラクティスをチェックシート化して、DLできるようにしてみた

以下がわたしなりのベストプラクティスをまとめたチェックシートです。
5ページのPDF資料です。まずはダウンロードしてください。
このあと、詳しく解説していきますね。

4.チェックシートで取り上げている1on1のノウハウを解説します

ではでは、チェックシートの中で取り上げているノウハウを順に解説していきます!
今回は、1回あたり30分の1on1で考えていきます。「30分の中に話の展開・構成が型としてある」と認識するのがまず大事。

①導入

はじめに、1on1を開始する「導入」のステップから見ていきましょう。あなたは1on1を始めるとき、最初になんと言っていますか?(もしくは、どんなことを言うイメージですか?)

よく起こりがちなNG導入、こんな感じです。

お互いの「何話せばいいのかなあ…」という心理から、ついつい、いつも話している業務報告になってしまうパターン。

でも、イケてる組織がやっている本来の1on1は「メンバーの気づきと成長のための時間」です。そういう時間にするには、冒頭でどんな関わりができたらいいでしょうか。

それは、場づくりのための声かけです。

「特に話したいこと、ないし…」
「本音を話しても、どうせ何も変わらない」
「時間の無駄だからやめてほしい」

多くのメンバーの心の内がこんな状態なのだとしたら、何よりもまず、安心して話せる場づくりがマストなわけです。ゆえに1on1において、「導入」の1分間はめちゃくちゃ大事な時間です。

具体的には、導入におけるチェックポイントは、この3つ!


✔️「なぜ1on1をやるのか」を率直に、前向きに伝えてみる
✔️この1on1の時間はメンバーのための時間であると明言する
✔️安心して話せる場であることを言葉で示す


これらを伝える際は「しつこく言い過ぎかも」くらいでちょうど良いとわたしは思っています。普段業務に関して指示命令系統のコミュニケーションがある以上、「1on1はあなたのための時間」と言われて、急に切り替えできる人は多くありません。「ここでは本当に自分の話をしていいんだ!」とメンバーが腹落ちするまでは、時間がかかります。何度でもしっかり伝えましょう。

導入の伝え方例も簡単にチェックシートに載せているので、参考にしてくださいね。

②テーマ合意

導入で「安心して話せる場づくり」ができたら、次は「なんの話をするか」の合意が必要です。テーマ合意におけるチェックポイントを見ていきましょう。


✔️基本はメンバーが話したいことをテーマにしてもらう
✔️事前にテーマを考えてもらっておくとよりGOOD
✔️ヒアリングフォームの使用もアリ


1on1はメンバーの気づきと成長のための時間なので、テーマはメンバーが主体的に決めるのが理想です。その場で聞いても良いですが、事前に考えてもらうことで、1on1が始まる前からメンバーの中で思考が深まります。

事前にメンバーが回答できるヒアリングフォームを用意し、そのフォームの選択肢からテーマを選んでもらうという方法も、メンバー側のハードルが下がるのでおすすめです。

テーマの選択肢は、チームでよく出る話題、メンバーの多くが困っていそうなことを想起して作ると良いと思います。例えばこんな感じです。

とはいえ、メンバーが1on1にまだ慣れていない場合や、メンバーから希望が上がってこない場合は、こちらからテーマを提示してOKです。そのときのポイントはこちら。


✔️リーダー側からテーマを提示する場合は、
・なぜこのテーマなのか
・このテーマを話すことによってどんないいことがあるのか
をセットで伝える


これを経ることで、メンバーの1on1に対する納得感や期待感が高まり、前傾姿勢で臨んでくれるので、より有意義な時間になります。

いずれの場合も大事なのは、1on1の時間をどう使うかを丁寧に合意すること。それがないと、グダグダなまま、あっという間に30分経ってしまいます。毎回30分の1on1がグダグダだったら…その時間、本当にもったいないですよね。

導入1分、テーマ合意2分。たった3分のちょっとした心がけですが、1on1の質はガラリと変わるはず。ぜひやってみてください。

③対話

さて、1on1のメイン、「対話」の要素にやってきました。ここは導入やテーマ合意と比べるとやはり複雑で、「このチェックポイントさえ押さえれば完璧!」なんて魔法はありません。ここでは、わたしが最もよくご相談をいただく「質問のしかた」にポイントをしぼってお伝えしたいと思います。

まずは質問のNG例。

…これ、「はい、そうですね」としか返せないですよねえ💦

上記のスライド内の質問のNGポイントは以下です。あらゆるNGパターンが網羅されていますね(笑)

  • 質問そのものが長い

  • 前置きが長い

  • 複数のことを同時に訊いている

  • 訊きながら答えを言っている

  • 半ば誘導している

つまり、自分軸で質問してしまっているわけです。
では、GOODな質問ってどんな質問でしょう。

上記の例のように、いかにも「自分が話したいことを話す」のは当然NGとして、ポイントは「自分が聞きたいことを質問する」のではなく、「相手が話したいことをうまく引き出せるような関わりをする」こと。これが、イケてる1on1と「形だけ」の1on1の大きな差のひとつです。

具体的な質問のポイントはこちら!


✔️オープンクエスチョンを基本とする
✔️クローズドクエスチョンをうまく使う
✔️深める質問と広げる質問を使い分ける


まず、オープンクエスチョンが基本です。オープンクエスチョンとは「はい」「いいえ」などの限られた選択肢で答えるのではなく、自由に回答してもらう質問を指します。クローズドクエスチョン(「はい」か「いいえ」で答えられるような質問)だと、聞き取り調査みたいになってしまって、メンバーの思考が広がっていかないんです。

ただ、だからと言って、「全部めちゃくちゃオープンクエスチョンで訊く」が正しいというわけでもありません。

例えば「メンバーの強み理解」というテーマで話す場合、「あなたの強みはなんですか?」とオープンクエスチョンで聞いて、いい感じで答えが返ってくるイメージはわきませんよね。「えっ…面接?」みたいな怪訝な顔をされそうです。

1on1で行う「メンバーの気づきや成長を促す」とは、相手の中に今はっきり言語化されていないものを明らかにしていくお手伝いをするということ。

だから最初は、「今やっている中で好きな仕事はなんですか?」「人と比べて苦なくできることはなんですか?」「AとBだったらどっちが得意ですか?」くらいにブレイクダウンして、オープンとクローズドの度合いを調整した質問ができると良いでしょう。
その後、返ってきた答えを深める質問(例:「具体的には?」)や、広げる質問(例:「他には?」)を繋げていきましょう。

もう一つ、質問で大事なポイントをご紹介します。


✔️詰問(きつもん)はしない


メンバーが黙った時、良かれと思って(もしくはなんとなくそわそわしてしまって)質問を重ねて間を埋めようとしていませんか?

でも沈黙には2種類あって、埋めない方がいい沈黙もあります。それは、相手が思考を深めていることによって生まれている沈黙。これはすごく大事な時間で、メンバーの内側から生まれる気づきや成長のタネ。この沈黙を埋めるということは、大事な成長の機会を奪う行為なんです。
だから、ただ穏やかに待っていてください。最初は5秒待つのもそわそわするかもしれませんが、ちょっと練習して、5秒でも、10秒でも、待ってあげてください。

一方、「どう答えたらいいか分からず困っている」「答えたくなくて黙ってしまっている」という類の沈黙もありえます。その場合は助け舟の声かけが必要。だから「今この沈黙は、埋めない方がよい沈黙なのか、埋めた方がよい沈黙なのか」を見極める必要があります。

しっかりメンバーの表情を見て、様子を見て、待つべきか声かけすべきかを判断できるようになったら、対話力レベルが一つアップするはず!

ちなみに「対話」に必要なスキルは、上記で解説した「質問」のスキルを含め7つに大別できます。以下の図にまとめていますので、ぜひ覚えておいてください。

④ラップアップ

最後の要素に辿り着きました! 1on1の終盤、ラップアップです。
ラップアップは、1on1で話したことを最後にまとめることを指します。

ここで大事なのは、まず、「ラップアップのための時間をちゃんと残す」ということです。「あっそろそろ時間ですね!続きは次回!」はNG。時間が足りなくなるくらい盛り上がるのはとてもいいことですが、終わりがふわっとしていると、せっかく良い対話ができていたのに効果半減です。5分、残しておいてください。

ラップアップのポイントはこちら!


✔️ここまでの話を要約する
✔️感想を聴く
✔️次回につなげる
✔️次回までの行動計画が決まればよりGOOD


一生懸命思考を働かせて話していると、何を話したかを人は結構忘れてしまいます。リーダー側が要約して一緒に振り返りましょう。

要約は、「テーマ合意」ができているとうまく行きます。「この30分をどうやって使いたいのか」「30分終わったときにどういう状態になれていたらGOODか」をマネージャー側が意識し、話の流れを程よくリードしつつ構造的に進めることができると、頭の中に30分の道筋ができているので自然と要約ができます。
途中メモをとるのもありですが、意識が手元に行ってしまうと本末転倒。相手の話を聴くことに集中し、メモはキーワード程度がおすすめです。

次に、ぜひこの30分の感想をメンバーに聴いてみてください。この時間は、メンバー・リーダーにとって以下のメリットがあります。

  • メンバー:言葉にして口に出すことで考えがまとまる

  • リーダー:メンバーの今の状態を知ることができる

1on1の最後には、「次回は、どんなテーマで話ができると良さそうでしょうか?」という感じで、次回につなげるような締め方をすることが大切です。
メンバーの成長目標がすでに決まっている場合は、「次回までにやれそうなことはありますか?」「それに対してわたしがサポートできることはありますか?」というように、次までの行動計画をスモールステップで置けるとさらにGOODです。

まとめ

1on1の基本のチェックポイントは把握できましたか?
次に1on1を実施する際には、ダウンロードしたチェックシートを見返してから臨んでみてくださいね。
もしあなたが人事担当者で、会社のマネージャーたちにこのチェックシートを配布したい場合は、本記事リンクもセットでご共有いただくと良いと思います。

最後に。
仕事って、しんどい時もたくさんあるけど、わたしはチームメンバーにはワクワク働いていて欲しいと思っています。「この仕事はやりがいがあるな」「自分の強みをいかせているな」「チームや世の中に貢献できているな」…そんな風に実感していてほしい。

そんな思いでメンバーと関わっていくと、彼らは花開くようにみるみる活躍していき、チームの成果が勝手に向上していくものです。それって、メンバーもマネージャーも、シンプルにめちゃくちゃ嬉しいこと。

あなたの組織で、ワクワク働くリーダーとメンバーが増えていくことを願っています。

7つの対話スキルの他項目や1on1の組織への定着ステップについて、もっと知りたい・相談したい・質問したい…という方は、Twitterもしくはnoteコメント欄からお気軽にご連絡ください。

5.Adobe Acrobat オンラインツールって使ってますか?

ところで、今回はアドビさんの「Acorbat オンラインツール」の企画なので、わたしが普段Acrobatをどのように活用しているかをお伝えしますね。

今回のチェックシートのようなお役立ち資料を、たくさんの人に使ってもらいたいなという時は、やっぱりPDF形式がいちばん。どんな端末でも開けるし、フォントを埋め込めるという点でデザイン性も◎。もはや当たり前のようにAcrobatの恩恵にあずかっていますが、改めて考えると、なんてありがたいんでしょう…。

わたしがAcorbat オンラインツールでもっとも使っているのはPDFへの変換機能ですが、それ以外にも、「痒いところに手が届く」系機能はこちら。

今回のようなダウンロード資料やセミナー資料って、「今回はこの資料のページだけが不要」とか「今回はここの順番を入れ替えたい」とか、「今回だけ」というのが発生しがちです。そういう時に、元データをいじらず、配布用のPDF資料だけいじれる。これが大変助かります。

これらの機能は、アプリをインストール・ログインしなくても、こちらのリンクをブックマークしておけばサクッとオンライン上で使えます。ありがたやありがたや。

例えるなら、営業のエースではなく総務のベテランさんのようなありがたさ。いつもそこにいてくれる安心感。アドビさんてそんなサービスだなーなんて勝手に思っています。

ちなみに、わたしは1on1実施後に簡単な記録シートをつけているのですが、これは共有範囲を限定したいので、Googleスプレッドシートやドキュメントなどを使用しています。

が、今回初めて知ったのですが、この「Acrobat オンラインツール」でも共有範囲の指定ができるんです!

共有された人は、PDFに自由にコメントを追加できます。
無料のクラウドストレージも付いているので、ちょっと次回使ってみようと思っています。


最後までお読みいただきありがとうございました!
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