DV ドメスティックバイオレンス

DVというものを受けて1ヶ月と少しを超えた。
仕事や居場所、持っているものの多くを失ったし、死ぬかもしれない恐怖を初めて感じた。その時のことを書こうと思ってしばらくして、ようやく書く気になったのだから、もうそろそろ昇華できるのだろうか。

運が悪かったら死んでいた。

お尻を数十回蹴られ踏みつけられ、灰皿を投げつけられ、髪を掴まれ引きずられ、揚句、口にタオルを詰められて首を絞められた。気絶をして、彼の『血が出ているよ』という言葉で目覚めたら、シーツは鼻かどこかの粘膜の血だらけで、喉がいがらっぽく痛みを感じ、血痰が出て、絞首の強さを感じた。お尻は翌日にはブルーベリーのように鮮やかな紫になって、元に戻るのに4週間はかかった。

それでもすぐにはわからなかった。

ふいに超えてしまった一線は、後戻りできると思って信じてやまず、翌日は仲直りをして一緒に過ごしたし、また会う約束もしたし、被害届は直ぐには出さなかった。暴行を受けた後に逃げるチャンスはいくらでもあった。それでも一度惚れた加害者の涙を見てしまえば、暴行をしてしまった罪悪感による彼の胸の痛みに同情してしまい、優しくしたくなってしまった。

今思えばDVにはよくある話なんだと思う。が、渦中にいると本当に見えない。

警察に届けを出したのはおよそ半月後。

それでも一か月強は一緒に濃い時間を過ごしていたため、荷物のやり取りが残っていた。荷物のやり取りの話の合間に挟まれる、『元気か?』と、これまでと変わらない何気ないメールに、性善説を信じていた。

電話口での『あなたを信じたい』という私の言葉に返ってきたのは、『お前のこと殺すって決めたから』。翌日に彼は脅迫罪で、私の通告により逮捕された。

警察に行くのはとてもとても悲しかった。今でも『好きだった』という良い思い出と、あの時の恐怖を行ったり来たり、複雑な悲しみは消えない。

振り返れば、その言葉は私を遠ざけるためのただの脅しだったのかもしれない。運転中に、車道に飛び出す猫を見ては、激しく脅かし、『一度こわい思いをさせてしまえば、今後気をつけるようになる』とあながち間違っていない持論を展開していた。

流石に、これを機に、連絡先などを消し、その街から姿を消し、縁を断ち切る様に行動した。

しかしながら、今世で二度と会わないように願いつつも、いつかどこかで笑って会えないものかと薄ら期待してしまう気持ちをまだまだ捨てきれない。どうしたものか。

これでも、彼のこの先の人生の幸せを、心より願う。

そして、わたしはわたしで幸せになると決めた。明日どうなるかわからない毎日に、今日を生かせてもらってありがとうございます。

2017.9月頃 記

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