絵に描いたような下品な金持ち

果たしてお金持ちは、上品なのか、下品なのか?

私の職場に、ごく稀に現れる金持ちがいる。
彼について言えば、彼は間違いなく下品な奴だ。

私の職場の同僚達は全員奴のことを嫌っているし、奴が職場に来たとしても、もはや誰も「いらっしゃいませ」も、「ありがとうございました」とも言わない。

もちろん、私も彼のことが嫌いだ。生理的にも無理なので、できるだけ視界にすら入れたくない。

ただ、お金は持っているのだろう。

彼はいつも運転手付きの車でやって来る。(あんな奴の下で働くなんて、考えただけで吐き気がする。)車は数年前まで高級車に乗っていたが、今はそこまででもない。

そして全身エルメスやルイヴィトンといった、これでもかという、いやらしいブランドを身に纏っている。これらのブランドは、持ち主が自社商品を身につける品格の持ち主かどうか、審査でも設けたほうが良いのではないかと、彼を見ていると思ってしまう。
それぐらい彼に着られると、ブランドのイメージが失墜してしまうのではないかと要らぬ心配をしてしまう。

更に腹立たしく思うのは、彼がいつも苛立たしげに電話していることだ。窓口で僕の同僚に接客されている時も、どこぞの誰かに電話越しに文句を言い続けている。
困ったことに、その会話の仕方にまるで知性を感じない。持ち込んできた書類の束もぐちゃぐちゃだ。先日なんて、延滞税だけで200万円も払っていった。延滞税だけで。

その額を惜しげも無く、さらっと払うのだからお金は持っているのだろう。
お金は持っているのだろうが、仮に彼と自分の人生を交換できるとしても、私はまっぴらごめんだ。あなたはどうですか?

開高健さんの「知的な痴的な教養口座」という面白いエッセイ集がある。
その中に次のようなエピソードがある。

開高さんが、あるブルジョワ階級のフランス人にブルジョワとは何か?と質問したのだそうだ。
すると、そのフランス人は、しばらく考え込んだ後に、

「私が思うに静かな生活をおくれることだと思う。」

と述べたのだそうだ。

これは前述の彼とは真逆の状態であろう。
彼は常に苛立ち、不満気で、他人を見下し、審美眼のまるでない装いをしている。

今、お金持ちの人達、または、これからお金持ちを目指している人達は、この「静かな生活をおくれること」をどこまで意識しているだろうか。

まあ、私は多少騒々しくても構わないので、一度くらいお金持ちになって、ブランド物を下品に着こなしてみたいと思っているのだか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?