水地一彰(みずちかずあき) スタートアップ× web3× 公認会計士

スタートアップの経営とトークン・NFTの制度(法・税・会計・ファイナンス)の情報発信し…

水地一彰(みずちかずあき) スタートアップ× web3× 公認会計士

スタートアップの経営とトークン・NFTの制度(法・税・会計・ファイナンス)の情報発信します!| USCPA|税理士|元経産官僚|エンジェル税制|エクイティ| SO | トークンファイナンス| M&A | IPO | IEO | 事業再生|スタートアップの入口から出口まで支援

最近の記事

トークンファイナンスか?エクイティファイナンスか?

I. はじめにweb3スタートアップで悩ましい選択がある。 エクイティで資金調達するか トークンで資金調達するか この2択は実に難しい選択だ。 そして、比較的早いステージでこの選択を迫られることが多い。 そこで、 なぜこの選択が悩ましいのか?そして、エクイティ、トークンそれぞれを選択した際のメリデメ、そして、最後に今時点で考える僕の解をまとめてみる。 誰か1人でも参考になれば幸いです。 II. エクイティ vs トークンの選択が悩ましい理由なぜ、エクイティとトー

    • シリーズAの前にM&Aイグジットを検討しておく理由

      I. はじめにスタートアップのM&Aがイグジットが増えてきた。 国を上げた起業ブームで起業家の絶対数が増え、リスクマネーの総量の増加により日本のスタートアップの裾野はこの10年で拡がった。 一方で、イグジットとしてのIPO件数はここ5年でほぼ横ばい。全く増えていない。 上場承認をする東証上場審査部のリソースを考えても100件程度が現実的なラインだし、証券会社や監査法人といったIPOに関与するプレイヤーも人不足で案件を受けられないという事態に陥っている。 兎にも角にも、

      • アーンアウト条項に関する税務上の取扱い

        I. はじめにスタートアップのM&Aがイグジットが増えてきた。 国を上げた起業ブームで起業家の絶対数が増え、リスクマネーの総量の増加により日本のスタートアップの裾野はこの10年で拡がった。 一方で、イグジットとしてのIPO件数はここ5年でほぼ横ばい。全く増えていない。 上場承認をする東証上場審査部のリソースを考えても100件程度が現実的なラインだし、証券会社や監査法人といったIPOに関与するプレイヤーも人不足で案件を受けられないという事態に陥っている。 兎にも角にも、入

        • ステーブルコインでの現物出資

          I. はじめに最近「USDTで出資できますか?」という問い合わせが増えてきた。 2023年に資金決済法が改正され、いわゆるステーブルコインが日本でも認められるようになった。 もともと米ドルにpegしたUSDTやUSDCは仮想通貨のボラティリティを回避する目的で流通していたが、 今般資金決済法の改正によりステーブルコインが法制度に位置づけられることで、これらUSDTやUSDCの出資も一般的になってきたことが背景だ。 II. 結論USDTやUSDCなどのステーブルコインで

          1円ストック・オプションの会計処理及び監査対応

          I. はじめに2023年7月国税庁が「信託型ストックオプションは給与課税の対象!」という旨の見解を出し、スタートアップ界隈が震えあがった日、国税庁はこれまで曖昧になっていたストックオプションの権利行使価額の考え方を明確に示した。 俗にいう1円SOの解禁である。 信託SOにNGを突き付けつつ、一方で、1円SOを認めるというバーター取引。アメとムチを使いこなす国税庁の手腕には頭が下がるばかりだ。 この1円SOとは、端的に言うと、適格SOの要件として「権利行使価額を時価以上と

          1円ストック・オプションの会計処理及び監査対応

          IPOとIEOを比較する

          I. はじめにIEO(Initial Exchange Offering)という資金調達方法があるのをご存知だろうか? 暗号資産取引所を通じてトークンを投資家に販売し、そのトークンをそのまま取引所で売買できるようになる仕組みだ。 これは、株式を上場するIPO(Initial Public Offering)のアナロジーからIEOと呼ばれるようになった。 そもそもIPOとは株式を発行することで多数の投資家から資金を調達することを意味するが、同時に株式を市場に上場させること

          エルフトークンIEOに関する会計処理と今後のIEOで思うこと

          I. 訂正と謝罪「IEO時の会計処理は売上計上するのではなく、負債として計上される。」と記載した。 しかし、ビットフライヤー社がリリースしているIEOに関する開示情報ではエルフトークンのIEO時の会計処理について「売上計上」という記載がある。 結果、発行元の株式会社HashPalletの純資産は改善され、債務超過は解消される(と考えられる)。 この点は、僕が開示情報を十分に読み込まずに誤った情報を伝え、多くの方に誤解を与えてしまった。深く反省します。 そして、本件ご指摘いた

          エルフトークンIEOに関する会計処理と今後のIEOで思うこと

          フィナンシェのスキームと法、税、会計

          I. はじめに最近話題のフィナンシェ。 「トークン!!ウェイ!!」みたいな一部のweb3の人の間で盛り上がりを見せているが、実はCAMPFIREやready forなどのクラウドファンディングのプラットフォームと同じく、どちらかというとweb2的な購入型(or寄附型)のクラウドファインディングのプラットサービスを提供している。 ざっくりサービスを解説する。 フィナンシェが発行するフィナンシェポイントをクレジットカードで購入する 購入したフィナンシェポイントでフィナンシェ

          どうする?1円ストックオプションの対応

          I. はじめに2023年7月に国税庁から発表された1円ストックオプション(権利行使価額1円で適格要件が満たされるストックオプション)。 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/230707/pdf/02.pdf ストックオプション(SO)を付与された従業員のインセンティブが増加する改正であることは間違いないが、一方で、SOの設計の自由度が増すことにより、これが却って多くのスタートアップを悩ませている。

          IEO(Initial Exchange Offering)に関する会計処理

          I. はじめにIEO(Initial Exchange Offering)がなんとなく盛り上がってきているような気がする。 2021年から2022年にかけて一気に盛り上がったNFTプロジェクト。2023年にクリプトの冬が到来すると一気に盛り下がりあらゆるプロジェクトが淘汰された。 が、、しかし、、 クリプト市場全体が回復の兆しを見せてきた2023年後半から「IEOを検討しています」という話を耳にする機会が増えてきた。 「IEOの審査プロセスが緩和される」という話もあるし

          ブロックチェーンの改竄不能性を利益剰余金のアナロジーで説明する

          1.はじめに「テクノロジーが未来を変える!」 この10年くらいで耳にタコができるほど聞いた話だ。 AIは非常に分かりやすく、我々の生活をどんどん便利にしており、最近では我々の仕事を本気で奪いに来ている感はあり、確かに未来を変えている気がする。 一方で、AIの次によく耳にするテクノロジー。 ブロックチェーンはどうだろう? 仮想通貨という世にも怪しい金融商品と共に登場したことが影響し、きな臭さが拭い去れないからか、そもそも技術そのものが複雑で理解が難しいからか、いずれにせ

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          「失われた30年」に加担してきた会計士

          公認会計士試験合格者のみなさま。おめでとうございます! みなさまのこれまでの筆舌に耐えがたい努力が実り、本日の結果につながったのだと思います。 過酷な試験勉強の日々を乗り越えて勝ち得たこの結果、喜びも一塩のことと思います。 本当におめでとうございます! さて、そんなめでたい日に全く空気を読まずに敢えて辛辣なことを申し上げたい。まだ、何色にも染まっていない今のあなたにこそ聞いてほしいと思っており、今日のこの合格の日にこの内容でブログを書くことを決めました。少しお付き合い

          会計士試験合格の本質とは

          公認会計士試験合格者のみなさま。おめでとうございます! みなさまのこれまでの筆舌に耐えがたい努力が実り、本日の結果につながったのだと思います。 過酷な試験勉強の日々を乗り越えて勝ち得たこの結果、喜びも一塩のことと思います。 本当におめでとうございます! 15年前に会計士試験に受かり、大手監査法人、事業会社、経済産業省、法律事務所、社外役員など複数のお仕事をしてきた僕個人が思う「公認会計士合格の本質」について、2023年の会計士試験に合格され、これから会計専門家として新

          ブロックチェーンゲームWizardry(ドリコム社)のスキーム

          I. はじめに2023年10月に東証グロース市場に上場しているドリコム社からリリースされたブロックチェーンwizardry。 これまでweb3界隈では暗号資産(仮想通貨)、NFTを活用したブロックチェーンを上場会社が行うことは難しいと言われ続けてきた。 しかし、社長の内藤氏は「いろんな弁護士さん、公認会計士さん、監査法人にチェックしてもらったこともあってこのスキームだったら大丈夫だろう」と発言しており、複数の専門家のお墨付き得て、この度満を持してローンチにこぎ着けたものと思わ

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          単線型キャリアか複線型キャリアか

          I. はじめに 先日尊敬する会計士の大先輩のてりたまさんのXでの以下の投稿がバズっていた。 「監査法人を辞めたタイミング」と「その意思決定の根拠」の2点を募ったXの投稿。進路に悩む若手の会計士に向けてのものだ。 皆自身の過去を振り返り、思い思いの経験を書き込んだ。 インプレッションが伸びたというバズという現象以上に実体験が書かれたことから、多くの若い会計士にとって非常に有益なスレッドになったようだ。 まぁ、僕が全く同じことをやっても全然書き込みされることはなく、ここま

          IEO時のトークンバリュエーション

          I. はじめにトークンを発行して資金調達を行う、いわゆるIEO(Initial Exchange Offering)が今後増加していく見込みだ。 自民党から公表されている「webホワイトペーパー」においても、「web3推進に直ちに対処するべき課題」の中にトークンの審査、発行、流通が位置づけられており、トークンを上場するIEOの審査の効率化、具体化、透明化が課題として掲げられている。 これまでは、既に市場で流通しているトークンが国内の暗号資産取引所に上場するケースが多かっ