カッコいい辞典「う」

「歌」である。

勿論うまいに越したことはなかろう。

しかし歌とは、ある二面性を兼ね備えていると僕は思う。

一つは自分に酔うことである。

自分が気持ちよくなるために歌う。

至極まっとうな意見であろう。

しかしそれとともに現れる面として、

歌を聞かされている者のとらえ方である。

本気とは相手に伝わるものだ。

自分に酔い、心を込めて歌うことは、上手い下手にかかわらず相手の心を動かす。

しかしまずは自分に酔うことであろう。

僕は今までカラオケの採点機能と言うものを使った試しがない。

自分の酩酊度合いなど点数を付けられる必要はない。

然し上手い下手かどうかに関してはこの採点機能は非常に心強い。

僕は自分が歌は上手いものかどうか確かめたくなり、先日カラオケボックスに足を運んだ。

向かう途中、採点されるならばそれなりの心づもりがいるであろう。

よしだとしたら、気合を入れることに越したことはない。

そう思い至った僕は、近くのコンビニに立ち寄り、エナジードリンクを買って、一息で飲み干した。

準備は万端である。

いざ部屋に入り歌うぞとなったところで、それは雷鳴のごとく僕の頭の中を駆け巡った。

僕はあんまり歌を知らない。

流行りの歌はもちろん昔の歌も僕は知らない。

学生時代聞いていたのはヒップホップのみである。

更にいうなれば、リップスライムしか聞いてこなかった。

さすがにリップスライムで採点されてもである。

僕はうる覚えながら歌えそうな、ディーンの「このまま君だけを奪い去りたい」に狙いを定め、いざ歌いだした。

酔いしれたい気持ちは十分あったが、音程のバーが画面に出てきてはずれていくため集中できなかった。

歌い終わり採点が始まった。

得点は65点。

非常に低いのは分かった。

そしてコメントが出てきた。

「メロディーが異なり、違う歌になっていました。音程を合わせましょう」

違う歌?

そして間髪入れず細かい採点が出た。

表現力85点。

ん?

表現力から歌唱力がマイナスで入っていた。

とんでもないことである。

とんだ赤っ恥をかいたものだ。

エナジードリンクをあおった自分が情けない。

しかし光明もある。

表現力はある。

あとはスキルだけだ。

カッコよくなるためには歌のスキルを培うしかなさそうである。


ここまで読んで頂きありがとうございました。
また逢う日まで。


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