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かながわ気候市民会議in逗子・葉山第5回(最終回)で旗揚げ採決を目撃⁉

かながわ気候市民会議in逗子・葉山の第5回(最終回)は、令和5年(2023年)12月2日、葉山町保育園・教育総合センター2階会議室で開催されました。

ちょうど、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている、国連機構変動会議(COP28)で、12月1日に首脳級会合が始まり、グテーレス事務総長は、「今行動すれば、最悪の混沌を回避する技術はある。リーダーシップと協力、政治的意思が今、必要だ」と話し、岸田首相は、「排出削減、エネルギーの安定供給、経済成長の3つを同時に実現するGX(グリーン・トランスフォーメーション)を加速させ、政界の脱炭素化に貢献する」と強調したとされました(朝日新聞、2023年12月2日)。

会場の大会議室には、8人座れるテーブルで6班に分かれて着席。(ファシリテーターを含む。)(最終的な出席者は、31名(46名中)とのこと。全体の3分の2。)

※ファシリテーターの説明、登壇者の発言等は、いずれも私が聞いてメモしたものから書いてます。聞き間違い等の可能性ある点は、ご承知おき願いたいと存じます。

1.「気候市民会議in逗子・葉山からの提案素案」の討議の説明

配布資料として、「気候市民会議in逗子・葉山からの提案 素案」、「気候市民会議in逗子・葉山 第5回に向けた市民からの意見」がありました。

傍聴人として受け取った資料

 13時から10分程度、最初の説明がありました。
 まず、確認として、まとめようとしているのは、政策形成のための提案で、市と町の担当部局に提出、あわせて人々に広く投げかけ、実現につなげるものであることを確認。
 その後、この日にやろうとしていることの概要説明がありました。
 先に傍聴した「あつぎ気候市民会議」で、参加市民と事務局がネットでやりとりしていたことも、逗子・葉山では、会場でいろいろとやるようなので、段取りについての理解がよくできました。説明は次のとおりです。

「気候市民会議in逗子・葉山からの提案素案」は
①    第4回のグループワークの成果物をグループファシリテーター及び事務局がexcelに整理。(4つのテーマで27枚出てきた。135の提案であった)。
②    「移動」「住まいとエネルギー」「製品」「食」それぞれに、①をもとに事務局と専門家が提案の大項目・中項目・小項目(具体的な提案)に整理して素案ドラフトAを作成。
③    11月13日の運営委員会で②作成のプロセスと内容を確認し、まとめ方を検討。
④    ②をベースに、さらに似通った提案をまとめた素案Bを作成(87項目)。
⑤    11月18日(土)午前に、参加市民のボランティア(Aグループ2名、Bグループ2名)による確認会を実施し、以下について意見を受ける。
1)第4回で出された意見で落ちている提案はないか。
2)ドラフトAからドラフトBへの整理段階で、市民が意図した提案のニュアンスが変化しているものはないか。
⑥    ⑤の結果を反映させ、本素案を完成。
(それらを反映させたものを1週間前に郵送した。おととい、追加意見をメールで送った。)

第5回は、市民提案(案)のさらなる検討を行う。
 提案に対する意思表明を投票で行う。
 第4回に、ABのグループで検討した、Aグループ提案、Bグループの提案を一本化し、全会の提案にする作業。
 会場で、4つのテーマのうち、GW(グループワーク)1で、「食」と「製品」に関する提案をブラッシュアップする。
 GW2で、「移動」と「住まいとエネルギー」に関する提案をブラッシュアップする。
 そして、GW3で、それ以外のものについて議論する。
 みんなで作った文書だか、温度差あるだろう。一つ一つにどれだけ賛同しているのか、違和感あるのか投票で決める。
全く推進すべきでない 1-2-3-4-5-6-7 積極的に推進すべき
 賛成票(5―7)が過半数に満たない提案は提案から外す。但し、外したものは、後日報告書には残す。
(「あつぎ」ではよく分からなかった7段階投票の扱い方がよく分かりました。)
 当初この投票は、第5回の会場で行うことも考えていたが、今回ブラッシュアップ後、整理したものを示し、ネットで投票してもらうこととしたい。

 運営委員長の加藤氏から「本日が最終。5回に向けて、多くの意見を出していただいた。これを広く公表する。12月半ばに、逗子市と葉山町に提出したい。追加の議論の方は、なかなか議論の時間とれないかもしれない。これまでの提案、わかりやすくする趣旨で、追加の提案を扱ってほしい」等の旨の挨拶がありました。

町役場近くの公園のパネル

2.提案素案のブラッシュアップGW(グループワーク)

 GW1は、「食」と「製品」の分野についてです。
 この分野について、渡部厚志氏(地球環境戦略機関)が次のような趣旨で説明。

 長旅、お疲れ様でした。5か月間。
 「食」と「製品」の分野は、身近なもので、話すのは楽しいかもしれないが、身近で毎日やっている分、違うことをやるのは難しいかもしれない。ちょっと今までのやり方を変えるのは、やだなとか、事情があってできないということもあろう。
 提案の文面を見て確認していくが、事情ある人を置き去りにすることもできない。提案をし、また、来年以降のアクションに続けていきたい。
 「食」、「製品」の分野で面白いと思ったのは、園芸部、ものの図書館に関する提案。また、海藻オーナー制度も面白いが、水俣市に似たようなものがある。海藻が増えると魚が育ちやすくなる。海藻の株を住民が持つ。漁業者を支え、環境の改善にもつながる。
 市民が頑張る。事業者、行政とどう協力したらよいか。
 肉を食べる日を減らす提案は、できる人、できない人がいるだろう。魚など他のたんぱく質を増やし、できれば肉を減らすみたいな表現もあるかもしれない。
 ものの図書館については、おもちゃの図書館が欲しいという考えもある。ものを共有して長く使う。リユースは、凄く良い特徴。ものを直せる人の知恵の継承、仕事を辞めた技術者、高齢者の役割にも関係し、アクションにつながると良いのではないかと考える。素敵だな、参加したいなと。
 そのような視点で議論して欲しい。

 こうした説明の後に、10分ほど、「食」についてGW。素案を見て、よくわからなかったことを聞き合う。修正や追加のアイディアを出し合う、話し合う。グループメンバーからの提案をA4用紙に書き出し、メインファシリテーターのところに提出する。
 次に10分ほど「製品」について同様なGWを行う。その後、5分程度、検討し足りなかったことを検討する。わからなかったことには専門家を呼んで話を聞ける。班には、第4回までのAとBの分科会の人が混在している。
 予定は若干延びましたが、メインファシリテーターのところには、10枚以上の用紙が集まっていました。それをホワイトボードに磁石で張り付けていきました。

3.修正や追加の大仕事!

 修正や追加の提案について、次のような説明がありました。

①    追加の文案を整理し、追加する。
②    修正の文案を整理し、採否を決める。
 原案に賛成 青
 修正案1に賛成 赤
 修正案2に賛成 黄
 修正案3に賛成 緑
  決めがたい場合 棄権してもよい。

 ここで、「旗揚げアンケート」との言葉がありました。その言葉を使って、「旗揚げ採決」と表現させてもらっています。
 さて、いよいよ、メインファシリテーターのところに出され、ホワイトボードに掲げられたA4の紙に書かれたものを処理していく段になりました。
 まず、素案にある文言を改めた方が良いという考えのものを扱うことになりました。言葉を追加するものも含めて。
 班ごとのサブファシリテーターが十分修正案という形に出来ていないものについては、メインファシリテーターが、専門家の渡部氏とともに、どういう修正案か整理し、全員に呼び掛けて、異論がなければ、そういう修正案として、「旗」で表決を行います。

 修正案の採決は、立法過程論でも難しいところがあります。国会の参議院委員会先例(令和5年度版)でも、わざわざ次のように取り上げています。

160 修正案は、原案より先に採決する
    修正案は原案に先立って表決に付する。
161 修正案が数個あるときは、その採決の順序は委員長が決定する
    同一議案に対し、修正案が数個あるときは、その採決の順序は委員 
    長がこれを決定する。
    数個の修正案が同一事項に関するものであるときは、委員長の認定
    により、原案に最も遠いものから順次採決する。
162 数個の修正案に共通の部分がある場合の採決の方法に関する例
    数個の修正案に共通の部分がある場合の採決は、案ごとにこれを行
    った例が多いが、次のような例もある。
    (1)共通の部分を一の問題とし、共通でない部分を案ごとに格別
      の問題として採決した例(略)
    (2)内容の大部分が重複した2個の修正案につき、共通の部分を
      原案に近い修正案に含めて採決した例(略)
163 修正案が可決されたときは、修正部分を除いた原案について採決する
    (略)

参議院ホームページより(r5i-se2.pdf (sangiin.go.jp)

 国会であれば、このような委員会先例録が全議員に配られており、採決の方法の共通理解は得やすいでしょうが、ここでは、メインファシリテーターが分野担当の専門家と、そうしたものなしで、修正案の作成(国会では議院法制局の役割)もしながら、採決方法の確認、決定(国会では委員長の役割)をこなすのです。全参加者のそれなりの納得を得ながらですから、かなりの力量が必要だと思いました。
 順不同で出されて張り出されているものを、その場で整理するのですから、なかなか大変で時間がかかっていました。先の説明にあったように、「旗」は、青、赤、黄、緑と用意されていましたが、同一の項目について複数の修文の意向があっても、修正案2、修正案3と位置づけて採決することは難しく、分解したり、統合したりして、結局、最初から最後まで青と赤だけで表決を行いました。
 「あつぎ」では、参加市民の特定ができなければ、撮影OKなのですが、こちらでは撮影NGなので、「旗」と呼ばれたものを描いてみると絵のように、「旗」というより、ちょっと大きめなカードのようなものでした。

「旗揚げ」採決のイメージ。赤は修正、青は原案のまま。

 そして、項目を丸ごと追加したり、削るという意見のものについては、後にオンラインで採決するので、ここで旗揚げ採決は行わないということで整理されました。削除すべきと考えるなら、7段階で1(~4)の評価をすれば良い、新たに追加した項目についても、採用するかどうかは、そのオンライン採決で態度表明をするということです。結果として、修文するかどうかのみを旗揚げする採決をすることになりました。
 後のオンライン採決の結果、削られる項目については、提案には入りませんが、報告書には経緯として載せるということも言われました。

 「食」について、文言を修正すべきという案が出て、旗揚げ採決を行った項目番号を並べると、写真で見られる番号の112、121、221、222、311、312、331、411等です。統合するもの、丸ごと項目追加で採決しないもの等もありました。旗揚げ採決が行われたものについては、赤(修正すべき)が多かったですが、青(原案のまま)の多かったものもありました。また、棄権者が結構出たものもありました。

「気候市民会議in逗子・葉山からの提案 素案」のうち、「分野:食」の部分。

 一例として、221「事業者や地域社会は、海藻オーナー制度を導入し漁業者を支援する」とあったのを、「事業者や地域社会は、海藻オーナー制度のような市民の農業者が協力し、地域の産物を作りながら海をきれいにする制度をつくる」と直す(と聞き取れました)ことについて、青(原案のまま)の投票もありましたが、赤(修正)が多数で修正されることとなりました。

 終わったのが14時半過ぎで、かなりの時間オーバーとなっていました。  
 休憩後、14時37分から「製品」について、同様な作業を行いました。
 様子はメモしましたが、これ以降の分野の内容の扱いについては、ここに書きません。省略します。「食」の分野や他の分野もそうですが、後日、第5回でいただいた資料と、最終版を比較し、どこがどう変わったかを確認し、いずれ整理したいと思います。
 
 14時51分からGW2となりました。
 「移動」の分野について、柳下正治氏(環境政策対話研究所)から説明があり、「住まい・エネルギー」については、加藤洋氏(神奈川県高圧ガス保安協会)から説明があり、GW2が行われました。
 15時12分にGW2は「移動」から「住まい・エネルギー」に移ります。
 15時28分から、修正等の旗揚げ採決です。
 旗揚げ採決の整理等は、「移動」については、メインファシリテーターと柳下氏が、「住まい・エネルギー」については、メインファシリテーターと加藤氏が担当しました。
 ここでも結構複雑な修正を扱いました。グループごとのサブファシリテ―タ―にもっと時間があれば、そこで修正案をしっかりまとめられるだと思いますが、時間が足らず、結局、メインのファシリテーターが必死に整理して採決していく感じになっていました。
 GW2が終わったのは、16時23分。次にやることとして当初予定していたのは、分野横断のものをどう扱うか等の議論とまとめ、そして、提案後の動きについての協議でした。しかし、17時の予定終了時刻までにそれらを終わらせるのは無理と主催者側で考え、16時35分、今後の予定の説明と、参加者の記念撮影を終えて、その後に時間がある人が残って、分野横断のものの扱い等を協議したいとし、参加者の了解を得ました。

葉山の山

4.逗子市・葉山町への提案へ

 今後の予定についての話となりました。
 令和5年(2023年)12月5日に市民提案素案の最終化を運営委員会で行う。 これをメール(一部郵送)で参加者に送付。
 参加者による投票(12月11日締め切り予定)。
 12月13日頃、「気候市民会議からの提案」完成。
 12月15日(金)13:00 葉山町長に手交。
 12月18日(月)15:00 逗子市長に提出。

逗子市役所と葉山町役場

 運営委員会委員長加藤洋氏から、さらに次の日程案が示されました。
 12月下旬 参加者アンケート実施。
      運営委員会の開催。
 1月中下旬 「ネクストステップ会議」の開催(運営委員会主催)
       ~その後の活動の在り方を話し会いましょう~
       名簿の破棄/フォローアップ活動への参加のお願い
       例えば、普及用冊子作成(制作・発行・市民会議メンバー)
 2月以降 フォローアップ活動のスタート。

<傍聴を終えて>
 同時期に、「あつぎ」と「逗子・葉山」の気候市民会議が行われ、両方の傍聴を行うことができました。両方とも、環境政策対話会議の柳下正治氏が関係してますが、運営主体の違いで、それぞれに違いが出ています。
 「あつぎ」の方が、情報公開に熱心で、会議の動画配信を積極的に実施し、傍聴人による写真撮影(参加市民が特定されない範囲)も認めたりしています。写真に写るのがNGの人は、ネームカードにつながる紐を黄色とする等の工夫をしていました。一方、「逗子・葉山」は、参加者の発言の自由度を高めることに重点を置いていました。
 専門的知見の参加者への浸透を、丁寧な段取りで行っていたのは共通でした。「あつぎ」は全6回で、「逗子・葉山」は全5回で、脱炭素ライフスタイルチャレンジを実施したりしてますが、1日は午前午後でじっくり時間をとってやってますので、時間数としてはほぼ並ぶのではないかと思います。
 一番の違いは、成果物の内容のまとめ方かと思います。
 厚木市は、地球温暖化対策実行計画が既に作られていて、それに基づく、市民のアクションプラン案を作るという位置づけで、逗子・葉山は、実行計画自体をこれから作るので、そこへの反映をターゲットにしているという、もともとの違いはあります。ただ、アクションプランと言っても、厚木市が市として推進しなければ実現が厳しいものも含まれています。
 逗子・葉山のものは、小項目が、「市民の取り組み、事業者、地域社会への提案」と「市・町(県、国)への提案、官民協働の取り組み提案」と別れている等、分かりやすい構造となっています。「あつぎ」のアクションプラン原案②では、主体ごとに★、☆、■と印があり、「市や事業者に依頼すること」等の区別がなされてましたが、全部一つの欄に並べられていて、若干わかりにくい感じもありました。「あつぎ」は、もともと条例による市民と厚木市の協働事業でもあるので、その成果物では、もっと、「市への提案、官民協働の取り組み提案」というような位置づけの部分をはっきりさせ、更に、最終日に、いつどのような形で、厚木市に、市長に持ち込むのか、そのあたりの説明があってしかるべきではなかったかとも思いました。そうした点、逗子・葉山の方は、基本的に、成果物は、市・町への提案という性格付けが自然体でできていたと思います。さらに、第5回に配布された参加者の意見には、議会への働きかけも必要、議会でも議論して欲しいとのものもあり、熟議民主主義の手法で実施された気候市民会議という認識がより強く持たれていた感もあります。
 成果物をまとめる手法等については、両者とも共通していましたが、いずれにしろ、もう少し時間があった方がよかったのではないかと思いました。
 逗子・葉山の方では、ある特定の班の参加者が、提案の素案の表現をできるだけ幅を持たせ、強制的な要素を排除しようという趣旨で様々意見を出されており、それがいくつも全体の会議で採決の対象となっていました。赤で修文が採用されたものも、青で原案のままとされたものもあったように記憶してます。
 そうしたものも含み、班内での参加者間の議論がどれだけされたのだろうかと少し思ってしまいました。時間がなくて、議論が十分できず、出された意見を班のサブファシリテーターが慌ててA4紙に書いて、提出した感じもありました。
 それから採決も、時間がないので、「あつぎ」も逗子・葉山も最終的にはネットでオンライン投票を行う形となっています。時間節約に、時代の変化に応じた手法を採るのもありかと思いますが、投票に圧力を受けないことの保証や、議論が構築する、文字情報以外の要素を投票判断に加味することも否定されるべきものではないと思いますので、一堂に会している中での投票の意義も認識した上で、採決の場を検討することもあっても良いのではないかと思いました。
 そうした意味で、知見の共有に時間をかけたように、修文や採決に向けた作業、そして採決に、もう少し時間をかけて、そのために、もう一日設けることもありではないかと思います。
 柳下氏が、「全体の枠組みを構築するまでが自分の大きな仕事だ」とのようなことを関係者と話していたのを耳にしました。運営委員とか実行委員の意識、作業能力等で、同じ柳下氏が関わっていても、成果物やその扱いが微妙に違ってくることを実感しました。 
 いずれにしろ、気候市民会議という日本の熟議民主主義の現在地点をしっかりと体感することができたと思います。 
 こうした取り組みのより進化した展開を期待しますし、そのためには、私も、更にこの分野についての研究を、政治学の分野での評価も見ながら、重ねたいと思います。

 最後に、傍聴等でお世話になった関係者の方々に心から感謝したいと思います。ありがとうございました。

葉山会場前からの富士山の夕景


 

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