整形外科×AI 何をするかの選び方 3つの基準(1/3)
こんにちはKazuです
先日めでたく博士号を取ることができました!
そして今後もAIの研究を続けていくことになりました!
整形外科×AIについて、今後の新テーマを決めるにあたり考えを整理してみました
自分は3つの軸をもとに何をすべきか考えています。
その3つの軸は①レベル②臨床的意義③実現可能性です
本日はまず①レベルについてお話します
①レベル
まず第一はレベルです
これはAIに何をさせたいかという程度のことです。
自分はAIにさせたい程度を5段階に分けています
①レベル1 誰でもできることの代替
②レベル2 当直医の代替
③レベル3 専門医の代替
④レベル4 専門医の中の専門家の代替
⑤レベル5 人智を超えたもの
レベル1は誰でもできることの代替です。
例えば問診用紙を電子カルテに反映させたり、アンケート結果をエクセルに記入するなど機械的作業の事を指します。
これは大学で研究する内容というより商業的要素の強いものかもしれません。
大学で扱って論文化を目指す領域としては該当しないかもしれません。
(企業などすれば、ここはメインターゲットになりうる)
レベル2は当直医の代替です。
我々医師には当直勤務というものが義務として存在します。
その中で専門でない領域の疾患も見ざるを得ません。
例えば眼科の先生が骨折を見なければならないシチュエーションは往々にして存在します。
当直帯で必要なことは、非専門の先生であっても、禁忌を見逃さず、重篤な症例は適切に専門医へコンサルトすることです。
細かい鑑別は付けられなくてもいいので、何かやばそう、骨折がありそう、その程度でもいいので相談をすることです。
これをAIでするというものです。
ありふれた骨折(例えば大腿骨頚部骨折)の有無をレントゲンで判断するなどはこのレベルにあたります。
このレベルは取り組みやすく、データも手に入りやすいので、新規参入するには新規性を出しにくい領域になります
レベル3は専門医の代替です。
例えば骨折の診断がついたとして、次の段階として骨折の程度評価が必要になります。
大腿骨頚部骨折ではGarden分類に従って重症度を判定し、治療方針を決めていきます。
骨折の有無という2クラス分類から発展させて、AIに多クラス分類を行わせたり、骨折病変をdetectionさせたりするのがこのレベルにあたります
このレベルも素直に思いつくような題材はすでにやり尽くされていて、新規性を出すにはなかなか大変です
またこのレベルの学習には専門家の先生のアノテーション(AIの学習教材)の準備がかなり大変なボトルネックになります
レベル4は専門医の中の専門家の代替です
自分は整形外科専門ですが、整形外科の中にも股関節専門、膝専門など専門が分かれています。
股関節専門の先生でないと判断が難しい病気の判定であったり、レントゲン上のパラメーター測定、疾患のgrade評価などありえます。
このレベルでは、レベル3よりもややニッチな分野になり、ライバルが少なくなります
ただしデータ数が少なくなりやすく、またAIの学習用のアノテーションもレベル3よりも大変になります
レベル3のアノテーションでは若手の整形外科専門医でもなんとかなるためやりやすいのですが、このレベルでは非常にお忙しい上の先生にアノテーションをお願いする必要がありアノテーションコストが非常に高くなります。
印象としてレベル4が最近論文化されだしている印象です
レベル5は人智を超えたものです
自分はここが最も参入しやすい部分と考えています
人智を超えたものは人間では絶対不可能な事をAIにやらせることです。
例えば人間では絶対不可能な処理量を解析して新たな知見を生み出すことや(よく知られた股関節レントゲン上のパラメーターを自動測定できるようにして何十万枚も測定させて、変形性股関節症増悪との相関を検証)、レントゲンからCT画像を作り出すことなどが考えられます。
このレベルはライバルが少ないこと、アイディア勝負で勝ちうること、単純に面白いことから一番参入しやすいレベルと考えています
ただし前例が無くうまくいくかどうかの保証もどこにもありません
ハイリスクハイリターンなものと考えています
ここで大事なのはアナロジーの視点です。
情報系で既に報告されている技術を、うまく医療分野で応用できないかと常に考えておくことが大事だと思っています。
今後このレベルで役立つ技術としてGANとVITと強化学習の3つがくるのではないかというのが個人的意見です。
まとめ
・なにかAI×医療で新しく取り組みをしたいときには5つのレベル分けを考えてみる
・おすすめなのが人智を超えたものAIにさせること
・人智を超えたものをさせるには、普段からアイディアをためておく
以上です。
目を通して頂いてありがとうございました。
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