#07 赴任前のこと
2021年12月。クリスマスプレゼントのようにモスクワ事務所への異動が決まり、コロナ禍のために日本に帰した妻と息子とようやく次の任地で一緒に住めるかと希望が湧いた。寒冷地で大変そうだけど、オペラやバレエがあり、音楽が好きな妻には良いかと思われた。
クリスマス前に一時帰国し、隣駅の大きなショッピングセンターの中の大きな書店でロシア語の本を何冊か選び、チェーホフとドストエフスキーの翻訳版を数冊手に取り、それからガイドブックも買い物かごに入れた。
妻は既にモスクワのインターナショナルスクールをリストアップしていて、学校の所在地をオンラインの地図上に印をつけていた。僕の勤務地と学校の場所を比べて、どの辺りにアパートを探すとよいかを考えてくれていた。彼女はモスクワ在住の駐在員の方々のブログを読んだりして、現地での生活の様子を知ろうと努めてくれていた。
僕の赴任の予定は年明けの2月15日だったので、息子を今通っている日本の学校に、次の学年の一学期が終わるまで通わせ、来年の夏にモスクワに渡航し、インターナショナルスクールの次学年の最初から転校させることにした。着任後の僕の仕事は、モスクワでいくつかの学校の下見をすることと、家族で住むアパートを見つけることだった。この時、2月に一緒に渡航しないことに決めたのは、不幸中の幸いだった。
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