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介護の話9 「廃用症候群」

 廃用症候群(生活不活発病)とは、長期間の寝たきり生活や喪失感などから、活動量が減少することで、身体機能が衰え、心身の様々な機能が低下してしまうことです。

 以前勤務していたデイケアで、まさに廃用症候群のご利用者と出会いました。

 そのご利用者はバリバリ仕事をされ、定年退職後急激に身体機能が衰えて、ご利用時は、自身で食事をすることも歩くこともできない、日常生活にほぼ介助がいる状態でした。

 しかし、数回ご利用された頃から徐々に変化がみられました。

 はじめは、反応も薄く言葉もあまりでない状態でしたが、職員や他利用者が話しかけていくうちに、徐々に返事を返してくれるようになりました。

 そこからの回復は目まぐるしく、気がつくと自分で食事をとり、ご自宅が施設の隣のマンションだったため、職員と歩いてデイケアに来るまでになりました。

 他のご利用者の中には、その方を職員と思っている人もおられるぐらい元気になっていました。

 利用日ではない日に、裏口からフラッと現れ「孫とハワイに行くからパスポートコピーさせてくれへんか?」と、施設に来られたときには、職員一同大笑いでした。

 そのご利用者は、仕事という自分の役割がなくなった喪失感から、意欲が低下して身体機能が低下していました。
 
 そんななか、デイケアに来ることで、色んな刺激や居場所、役割ができたことが刺激になり、劇的に状態が改善しました。

 もちろん、全ての方がここまで改善するとは限りませんが、私たちはいい経験をさせていただきました。

 このご利用者は、持病のかかりつけ医が遠方の病院だったため、通院のことを考えて、病院の近くに引っ越しされることになり、デイケアのご利用は終了しました。

 引っ越しの前にご挨拶に来られ、「ここにきてよかった。ここに来んかったら、今のただのおっさんには、戻れんかったもんな!」と笑顔で出発されました。

 私も今は後期高齢者の母がいますので、鬼娘と思われようとも、母には出来る限り役割を奪わないように注意しています。

 主な役割は、私の母でいることです。

 なので、今でもアラフィフの可愛くない娘の世話をせっせと焼いてくれています(笑)。

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