カスタマーサービスに電話しながら対戦車ミサイルを撃つー小泉悠『ウクライナ戦争の200日』を読んでみた
ここ最近カンボジア内戦、満州についての小説を読んだのですが、すると今の戦争についても考えたいという思いが高まってきました。いまさらですが。ウクライナ戦争といえば小泉悠でしょということで、二冊書いましたよ。『ウクライナ戦争の200日』(文春新書 2022年9月)と『ウクライナ戦争』(ちくま新書 2022年12月)。
前者は対談集(鼎談もあり)で小泉が批評家(東浩紀)、小説家(砂川文次)、防衛研究者(高橋杉雄)、映画監督(片渕須直)、漫画家(ヤマザキマリ)、ドイツ人エッセイスト(マライ・メントライン)、ルポライター(安田峰俊)と対談します。そしてこれは9月刊行。後者は小泉の書き下ろしで12月刊行。そこでまずは前者から読んでみました。先に刊行されていることと、まずはいろんな立場の議論を広く確認するのがよいと考えたからです。この考えは正しかったようで、小泉も『ウクライナ戦争の200日』で述べています。
まさに私のために書かれたような本でした。
この記事では、私が特に気になった点を取りあげます。そして対談別に考えるのではなくて、対談をぜんぶまとめて一冊の本として読んでいきます。
ロシアの目的
そもそも、なぜロシアはウクライナ侵攻をはじめたんだっけ?私はここからのスタートになります。意識低くてすみません。
土地所有問題。本来誰のものでもなかった土地を所有しようとして人類は争ってきました。この問題を解決しないと戦争はなくならないのではないかと思います。解決方法はまったくわかりませんが、何年かかっても解決させなければならない課題だと思います。
ロシアは日本の隣国
北朝鮮や中国よりも遠いイメージのロシア。モスクワやサンクトペテルブルクが西の方にあるからそう思うのでしょうか。
はい、そのとおり。平和ボケしていましたよ。ロシアは隣国だし、日露戦争や満州でも争っていたんですよね。
日本は安全保障方針を考え直さないといけないとは思うのですが、できる気がしません。どうすればいいのかまったくわかりませんが、このままではいよいよまずい予感しかしません。
日本の避難計画
ウクライナ戦争による日本の安全保障への影響はどうなっているのでしょうか。
今のロシアを見ていると、私たちとは異なる論理で動いているのではないかと思います。誰も戦争を予測できなかったからです。だとすると、確かにどこで止まるかわかりません。日本も標的になりうると。では、そのときのシミュレーションはできているのでしょうか。
いやいやいやいや、ぜひシミュレーションをお願いします。地震も戦争も将来起きるかもしれません。
紛糾する火力調整会議
戦争映画を見ていると、指揮官は論理的かつ迅速に判断していることが圧倒的に多い印象です。あんまり優柔不断な指揮官は登場しないのではないかと思います。命がかかっているので優柔不断では組織を維持できないのかもしれません。いっぽうで、まだ戦争が勃発していないために、一撃目の判断が遅れ、壊滅させられてしまうシーンもあります。日本の自衛隊は論理的かつ迅速に判断できるのでしょうか。
縦割り組織にありがちです。横串の火力配当指揮組織みたいなものはないのでしょうか?これがないのに戦場ではどのように判断するのでしょう。まさか戦場で紛糾したりして。
戦争に倫理はあるのか
かねてから疑問に思っていました。戦争自体が倫理にもとる行為なのに、民間人を攻撃しないとか、略奪しないとかそんな倫理がありえるのだろうかと。
やはりいつ死んでもおかしくない状況に長期間おかれたら、倫理は壊れそうです。専門家は「倫理的にありえない」と言いがちですが、そこそこありえるのではないかと思います。そうなると核兵器の使用はどうなるのか。
はい。残念ながら私もそう思います。
プーチン政権は終わらない
体調不良とか、認知症とかでプーチンが政権からおりるシナリオはないのでしょうか。
独裁者の後継者も独裁者になると思いますが、後継者にとっては先輩の独裁者は邪魔者以外の何者でもないので、仮にプーチンが権力を後継者に譲ったとしたら、その後継者はプーチンを排除するような気がします。ということで、プーチンが権力を手放すことはありえないようです。
驚きの戦場
本書から、まったく知らなかった戦場の現実を教えてもらいました。
ま、マジっすか。頑丈だと思ってましたよ。脱落した戦車は回収するのでしょうか。それとも置きっぱなし?壊れた戦車をどうするのか、映画とかで見た記憶がありません。
笑っちゃいけないと思うのですが、笑ってしまいます。前線から武器の使用方法をカスタマーサービスに聞く。しかも一次受付は広報部署。これを読んで、福島第一原発にヘリから放水を試みたシーンを思い出しました。人間ってヤツは…。
私たちは愚かだと思います。しかし、愚かなりにこの状況にどう対処すればよいのか考えなければ。ヒントを求めて、次は『ウクライナ戦争』を読みたいと思います。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?