感染症診療の考え方 その1

感染症関連の書籍もずいぶん増えたよね。若干増えすぎなんじゃないかと思うぐらい増えたよね。ただ最初に言っておくと、素人が買っても怪我をしない本というものはそう多くはない。

1.レジデントのための感染症診療マニュアル(辞書!)

2.感染症プラチナマニュアル (あんちょこ,毎年改定されるのが良い)

3.抗菌薬の考え方,使い方 ver.4(読み物として)

もうはじめに読むのは大体このぐらいで良い。いきなり1は分量的にヘビーかもしれないので、2と3から入って1を辞書として置いておくぐらいでよい。もちろん他にも良い本はたくさんあるが、上記はいわゆる王道なのだ。本来であればこれらをイチから読んでもらえれば済む話なのだが、それができないからお前たちはここにいるわけだ。おれは全部わかっている。結論に急ぐ気持ちを抑えられないお前らがこれらの成書の初めの章に書かれている項目をまんまと飛ばしていることも知っている。

ここには大抵、それはそれはありがたい【感染診療の考え方】が書かれているものなのだ。

言いたいことはわかる。退屈なんだよね、正論しか書いてないから。赤の他人に正論を叩きつけられるほどかったるいことはない。そんなお前たちのことを思って、俺がこの章のエッセンスを強引に4行にまとめた。つまるところ、どの本の第1章もこれを言っているに過ぎない。

①異常の認識
②臓器の推定
③菌の推定
④抗微生物薬の選択

いかなる感染症であっても、診療にあたってはこの4つのSTEPを踏む必要がある。このどれが欠けてもだめで、なおかつこの順番である必要がある。そしてこれさえ出来ていれば、診療で大外しする可能性が格段に下がる。


この手順が欠けたり順番がずれたりすると、尿路感染症の治療をしていたのに痰から緑膿菌が出てきたからといって抗菌薬を変更してみたり、CRPが40だからただの蜂窩織炎のはずがない!他に熱源があるはずだ!みたいな摩訶不思議な論理を展開して診療を行うハメになる。特に異常がないのに週末だからといって何となくセフトリアキソンを流しておくなども論外だ。


結論に急ぎたいお前らが陥りやすい思考パート2は①から直接④に飛んでしまうやつだ。CRP上昇→抗菌薬どうしよう→ええぃ景気づけにメロペンいったれ!みたいな。ノリだけで始まった抗菌薬は、継続するにせよ終了するにせよ同じようなよくわからないノリでなんとなく判断されやすい。結果的にきわめてなんとなくな感染症診療に終止するという構図だ。

目の前で感染症を起こしてるかもしれない人をみたら(何をもって起こしてるかもしれないと判断するかも重要、後述する)、まずはどの臓器がやられていそうかを見積もるのだ。臓器ごとに感染を起こしやすい菌というものがあるので、臓器が絞れれば原因菌もある程度見積もることができる。抗菌薬は、それらをだいたいもれなくカバーできるようなものを選んでやればいい。②と③がないと、いくら薬の知識があっても薬の選択ができないということがわかるだろう。

とりあえずここまで覚えてほしい。

①異常の認識
②臓器の推定
③菌の推定
④抗微生物薬の選択


くどいが、この4ステップを意識すること。
感染症診療を苦手としているひとの多くは、知識が足りていないというより(いやそれも大いにあるのだけど)、そもそもこのSTEPを踏めていない場合が圧倒的に多い。

各STEPをもうすこし詳しく書くので、余力のある者は感染症診療の考え方その2も読んでほしい。

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