マジックワードとしての「お疲れさま!」

日本人あるいは日本語話者であれば、「お疲れさま」ということばを日々欠かすことはできない。ぼく自身はあまり「お疲れさま」と言うのは好きではないのだが、このことばは文脈によって変幻自在のふるまいをするしごく便利なあいさつなので、しぜん頻繁に使うことになる。

いまの職場では同僚と通路で会っても喫煙所で会っても休憩室で会っても「お疲れさま」である。このときのお疲れさまは英語でいえばHiとかHelloといった感じの意味である。とくに朝から昼にかけてはそういう意味だろう。終業時刻が近くなると文字通りの意味になる。英語でいうと、Take careとかGood byeという感じか。

「お疲れさま!」が Today was so tough, but we did the best haha!! というやや複雑なニュアンスを含むことももちろんある。これはことばを交わし合う両人の関係性にも拠る。なぜ英語で言い換えているのかというと、自分にとっていちばん身近な外国語が英語だから、というだけで深い意味はさしてない。

日本語が分からない外国の人びとにとっては「Otukaresama」が「やあ」とか「こんにちは」「じゃあね」「さよなら」「きょうはきつかったね、でもおれらよくやったよね!」といったように強くコンテクストに依存してその意味を変容させるあいさつ言葉であるということを分かってもらうのはなかなか難しそうだ。もちろんオロマンケ語―いまぼくがでっち上げた架空の言語―では「Mofmof」という単語一つが文脈によって意味を変えて21くらいの語義(語釈)をもつという可能性ももちろんあるわけだが...。

約40年間、日本語ネイティブとして生きてきたが、ことばはまことにふしぎなものだ、と思うことは日々ままあるのだ。みなさんは、いかがですか?

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