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住宅ローン借りて、株にも投資?

「返済に勝る運用はない」というのは、教科書的には正しいはずだ。
 もしも返済に勝る運用があるなら、つまり借金をして投資しても利益が確実に出せるのなら、皆が借金をして投資するようになるだろう。まず真っ先に銀行が、金貸し業の代わりにその投資先にお金を注ぎ込むだろう。投資元は続々と増えて、利回りはそのぶん減ってしまうはずだ。長期的に考えれば、理屈上あり得ない。

「よく家のローンを払いながら、株に投資する人がいるんだけど、あれはやめたほうがいい。仮に家のローンが金利2%だとしたら、早く返すだけ、2%で運用しているともいえる。リスクゼロで確実にプラス2%で運用できる方法なんて今はないから、全力でローンを返したほうがいい。返済に勝る運用はないからね」
(抜粋元:山崎元・大橋弘祐「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください! 」文響社、2015年)

 そのはず、なのだけれど…。
 いまは空前の低金利で、住宅ローンは金利0.5%とかで借りられてしまう。
確かに、住宅ローン借りている限り確実に0.5%複利で銀行さんに持っていかれるのだけれど、頑張って投資したら勝ち目があるんじゃないか?とも、素人目には思えてしまう。

 これはとくに、今回のぼくたちのように物件の買い替えをする人にとっては、悩ましいところだと思う。

 例えば、いまローン2,000万が残ってる状態で買い換えをして、新居の分の追加3,000万のローンを組んだとする。
 で、新居のローンを組んだ3ヶ月後に、いま住んでるおうちが3,000万で売れたとする。元の2,000万のローンを売却時に清算して、差し引き1,000万の現金が手に入る。
 ここで教科書的に堅実な対応としては、その1,000万で新居のローンを繰上返済することだ。そうすると、ローンの金利ぶん、確実に得をする。
 あるいはここでちょっぴり冒険をして、2%の配当が見込める株式を1,000万、買っちゃうこともできる。うまくすれば金利の差分、2.0-0.5=1.5%ぶん得をする。

投資の勝負、と考えるなら

 さてここまでで、ぼくが計算間違いをしているのにあなたは気付けただろうか? ちなみに、ぼくはこれに気付くのに数ヶ月かかった。

 投資の勝負と考えると分かりやすい。
 こちら側としては、1,000万を2%で運用。
 銀行の側としては、3,000万を0.5%で運用。
 こちら側よりも銀行側のほうが金利は低いけど、元手は3倍ある。この、元手3倍の差を金利でひっくり返せないと、銀行には勝てないのだ。

 教科書の通り堅実に、繰上返済をしたとする。
 3,000万を元利均等35年ローンしてて、3ヶ月後に1,000万を繰り上げ返済すると、銀行への返済総額は3,117万になる。

 10年間、ローンの返済を続けながら株式運用をしたとする。
 こちら側の1,000万は、複利でうまく2%で運用できたとすると、10年後には1,218万になっている。銀行側の3,000万は、返済の残りは2,195万になっている。この時点で、こちら側の1,218万を繰上返済したとすると、返済総額は3,157万になる。

 支払総額が、最初から繰上返済すると3,117万、株に投資した後で繰り上げ返済すると3,157万。最初から繰り上げ返済しておいたほうがお得だった、という計算になる。
(たかだか40万の差じゃないかと思ってしまったとしたら、ちょっと大きな金額で計算をしすぎて庶民感覚を忘れかけているのだと思うので、40万円あったらガリガリ君がいくつ買えるかなどと計算してみて、ちょっと冷静になったほうが良いだろう。)

 今回のケースだと、元手3倍の差をひっくり返すには2%以上で運用できないといけない。その自信があるのなら、挑戦してもよいかもしれない。
 ただ、冒頭の引用にもあったように「リスクゼロで確実にプラス2%で運用できる方法なんて今はない」というのが投資のプロの意見なので、あなたが投資のプロでないのなら、おそらく勝ち目は薄い。

 こちら側の元手をもっと多く用意できるなら、計算はまた少し変わってくる。
 カシオの計算サイト(https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183302)とか、住宅保証機構の計算サイト(https://www.hownes.com/loan/sim/repayment_advance.asp)とかを使って、銀行との投資勝負に勝ち目があるかどうか、じっくり計算してみると良いと思う。

もしも勝負をかけるなら

 銀行との投資勝負に打って出ることにしたとして、他にも心配事はある。

 もし今後、金利が上がったら?
 そのときは、そのときになってから株式を売って、そのお金で繰上返済をしないといけないだろう。金利が上がると株価は下がる傾向があるらしいので、たとえば債券とか、金利が上がっても値下がりしにくそうな投資先をあらかじめ選んでおけば、リスクを下げられるかもしれない。

 あるいはもし、選んで買った株なり債券なりが、値下がりしてだめだめになってしまったら?
 傷が浅いうちにできるかぎりの値段で売って、別の投資先を探すか、あるいはあきらめてその時点で繰上返済に回すしかない。投資先を複数に分けておけばリスクは下げられるだろうけど、絶対ではない、幾分は損をするかもしれない。

 あらかじめ「ローンの金利が何%にまで上がったら繰上返済する」とか、「この株は何円にまで値下がりしたら売る」とか決めてから投資をすると、いざというとき悩まないで済む。事前に損をする覚悟ができる分だけ、投資すればいいのだ。その覚悟ができないなら、手を出すべきではない。

ささやかな事例

 さて、ぼくたちとしてこの問題をどうするかについては、まだ結論が出ていない。ざっくり計算はしてみたが、まだまだ覚悟ができてない状態ではある。
 まぁ急ぐ話ではなし、お正月にでもじっくり考えてみようかなとは思っている。