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禅語の前後

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禅の言葉をテーマに何か書いてみよう、という試み。
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2021年1月の記事一覧

禅語の前後:人面桃花相映紅(じんめん とうか あい えいじて くれない なり)

禅語の前後:人面桃花相映紅(じんめん とうか あい えいじて くれない なり)

「人面桃花…」は、今から1200年ほど前、中国唐代の崔護という詩人の歌の、二句目の部分にあたる。

去年今日此門中  去年の今日、此の門の中
人面桃花相映紅  人面桃花相映じて紅なり
人面不知何處去  人面は知らず、何処にか去る
桃花依旧咲春風  桃花旧に依って春風に咲む

 去年の今日こちらのお宅で、美人さんの顔と桃の花とが、互いに紅色を映し合っていた。あの美人さんは何処に行ったのやら、けれど桃

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禅語の前後:忘却百年愁(ひゃくねんの うれいを ぼうきゃく す)

禅語の前後:忘却百年愁(ひゃくねんの うれいを ぼうきゃく す)

 寒山という、中国・唐代初期の伝説的な人物が、書き残したと言われる詩の一節。
 この寒山さん、実在したとしたら相当ぶっ飛んだ人物だったようだ。頭には樺皮を被り、ボロを着て木靴を履き、夏にも雪が残るような寒い山に住み、挨拶されると大笑いして山へ逃げ去る。…人物というより、むしろ妖怪じみている。
 この詩は、彼が山中のあちこちに書き残したものを集めたなかのひとつ、と言われている。題名も無く、通称として

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