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応募者にも面接官にも読んで欲しい面接の話〜約6年間の面接官経験振り返り〜

前職のITメガベンチャーにて、新卒・中途採用の最終面接の面接官を約5年にわたり、経験させてもらいました。
今月(2022年5月)スタートアップに転職し、会社のフェーズ的に新卒採用に関わる機会は減るなどの変化はありそうなので、この機会に自分の面接に関する考え方をまとめてみようと思います。

なお、私は、面接について体系的に学んだり、研修を受けた経験はなく、完全に“野良”面接官です。
なので、一般論からズレているかもです。

一方で、中途・新卒両方の面接をたくさんこなし、職種もビジネス・デザイナー・エンジニアとさまざまな面接を行ってきました。
また、Matcherという就活アプリを通じて、300人を超える学生の就活相談に乗ってきたので、それなりの経験はしてきたかなと思います。

面接における「誤り」とは何か?

応募者だけなく、面接経験の浅い面接官は、面接における 「誤り」応募者が面接に落ちてしまうことと思いがちです。
しかし、面接は「通るか?通らないか?」ではありません。
私曰く、面接に落ちることは誤りではありません。

面接における誤りとは、
本来、通すべき人材を落としてしまうこと

本来、通してはいけいない人材を通してしまうこと
です。

第一種の過誤と第二種の過誤

統計学に第一種の過誤第二種の過誤という言葉あります。
参考:第1種の誤りと第2種の誤り

これと同じように考えると、面接においては、この4つの組み合わせがあります。
適合人材は面接を通るに足る能力・スキル・人格がある人、不適合人材はそれらがない人です。

このように考えると不適合人材を不合格にすることは正しい選択です。

面接における「誤り」は、

  • 本来、通すべき人材を落としてしまうこと

  • 本来、通してはいけいない人材を通してしまうこと

です。

最終面接では「通してはいけいない人材を通してはいけない」

私は主に最終面接の面接官をここ数年経験しました。
最終面接でやってはいけないことは、本来、通すべき人材を落としてしまうことではなく、通してはいけいない人材を通してしまうことです。

適合人材を落としてしまうことは、機会損失とはなってしまいますが、実損は発生しません。
しかし、不適合人材を通してしまうと、その人が入社することによって、チームや会社に悪影響が出てしまう可能性があります。

そのため、最終面接においては、通してはいけな人材を通してしまうというリスクを避けるべく、迷ったら落とすという判断をします。
この点が、最終面接の特徴的な部分だと思います。

最終面接でない面接・書類審査の心構え

逆に、最終面接以外の面接や書類審査ならどう考えるべきかというと、その時に避けるべきリスクは、通してはいけいない人材を通してしまうことではなく、本来、通すべき人材を落としてしまうことであるべきです。

最終的なジャッジは最終面接で行いますので、その前の面接においては、広くとらえて、迷ったら通すという判断をすべきです。
それによって、本来、通すべき人材を落としてしまうというリスクを最小限に抑えます。

このことは、面接官を任された際には念頭において欲しいのと、もし、自分が面接を通過させた応募者が最終面接で落とされたとしても、自分の見る目のなさや、能力不足を感じる必要はないということも知っておいて欲しいです。

中途採用の場合

中途採用の一次面接のような現場メンバーによる面接なら、その人が

  • 募集している業務をしてもらえそうか?

  • チームとして一緒に働けそうか?

という比較的「今」を基準として、合否を決めることができます。

しかし、最終面接官として、その人を採用するとなると、考える時間軸はもっと長くなります。

  • 将来的に事業責任者やマネジメントができそうだろうか?

  • 募集しているポジションにしばらくついてもらった後、新たな業務を任せられるだろうか?

  • 中長期的に評価できるだろうか?昇給させられるだろうか?

求めるポジションにあった人を採って、合わなくなったらドライに判断するというのも良いかもしれません。
そのあたりは、企業の方針によるものの個人的にはちょっと難しいかなと思っています。

現場メンバーの面接ではOKが出ているけど、最終で経営陣からNoが出すケースは少なくないと思います。
そのようなケースは、確かに今の募集ポジションはできるかもしれないけど、その後に次のステップに進んでもらうイメージが持てないというケースが多い気がします。
特に、若手だとまだ可能性も広くあって、ポテンシャルにかけるということができます。
しかし、中堅~ベテランになってくると、次のステップに進めるイメージが持ちづらくなり、定年まで募集ポジションで働くことが本人にとって幸せか?の合意が取れない限りは、なかなか採用という判断にまで踏み切れないことはあるかなと思います。

ただ、このあたりはジョブ型雇用が浸透してくれば、私も含めて変わっていく部分かもしれません。

新卒採用の場合

一次面接、二次面接や面談を経て、最終面接まで上がってくる学生は当たり前ですが、優秀です。
ただ、中には、マイナスはなく、優等生然としているけれども、秀でたところを感じないオール3、という感じの学生もいます。 私は、限られた採用枠である新卒採用ということもあり、こういった学生は落としていました。

通すのは、

  • 高いレベルでバランスが良い学生

  • 粗削りで合格水準に満たない部分もあるが、特に秀でた部分がある学生

の2パターンです。
前者はわかりやすいと思います。
後者に関しては、これは私の仕事観でもあるのですが、仕事とは能力の借り物競争だと思っていることによります。

受験など1人で挑むものだと、3科目とか、5科目とか、バランスよく高いレベルで得点を取る必要があります。
しかし、仕事はチームプレーで、すべてを1人でやり遂げなければいけないわけではありません。
自分が苦手なことがあっても、周りにそれが得意な人がいれば、その人の能力を借りることは禁止されていません(むしろ推奨されている)し、借りることができれば、最大の成果を出せると思います。
そのため、そこそこバランスよく1人でこなせる人よりも、周りの人に必要とされる秀でた部分がある人がたくさんいるほうが、組織として成果を出せると私は思っています。

とはいえ、新卒採用の場合、中途採用と違って、経験やこれまでの実績があるわけではないので、特に秀でた部分を見つけることは難しいです。
その部分に関しては、会社のVALUE行動指針を基準に判断すべきかなと思います。

あとは、きちんと物事を客観的に見えるかどうかも大事です。 学生に限らず、主観と客観の区別ができない人は一定数いると感じています。
私は、IT業界にいますが、我々のサービスは直接対面ではなく、ネットを経由して展開するサービスである以上、各種サイト上でのユーザー動向など、客観的にデータを判断するという能力が強く求められます。
そのため、客観的に物事を見れず、主観でしか判断できない人は、我々のような業界はあまり向かないかなと思います。
中には、主観で押し切るさまが非常にエネルギッシュに見える人もいて、そういった人が面接で通ってしまうケースもあると思います。
しかし、私は自身の性格も相まって、そういった人はわりと冷静に見てしまいます。

ただ、主観がダメだとは私は思いません。 むしろ、主観こそ大事です。
私が思う優秀な人は、きちんと事実・データをもとに客観的に物事を判断でき、その上で、主観と客観を区別し、さらに、自分はこうしたいという主観(信念と言い換えるべきかもでしれません)がある人だと思います。
最後は、事実データよりも想いが大事になることは往々にしてあることは経験を通して感じています。

最終面接でなければアドバイスをする

これもその応募者がとても良い場合に限りますが、最終面接ではない場合には、最終面接に備えてアドバイスや気になったところを指摘してあげるのも良いかなと思います。
付け焼き刃で最終に通ってもらうのを目的としているわけではないし、小手先のテクニックを授けるわけではありません。
まだ深堀りができていないところや、話のなかで違和感があるところを教えてあげたり、もう少し深く考えてほしい部分を考えるように仕向けるという感じです。
そうすれば、本人の成長にもつながるし、結果的に最終面接にも通過するし、就職活動における納得感も増すのではないかと思います。

最終面接官が必要な覚悟と気持ち

最終面接官を経験して大きく意識が変わったことは、

  • 私の意思決定が応募者の人生に大きな影響を与える

  • 面接におけるはコンバージョンは合格ではなく、入社、そしてその後の定着・活躍

ということです。

面接で落とすことは、通すことに比べると、どちらかというと気が楽です。
本人にとってはショックだし、応募者に恨まれるかもしれませんが、他にも世の中にはたくさんの会社があるし、もっと応募者にとってふさわしい会社が見つかるかもしれません。

一方、面接を通過して採用となると、その人は、自身が働く会社で一緒に働くことになるわけです。

  • この会社に入社することはこの人の人生にとっていいことなのだろうか?

  • 入社後に思っていたのと違う!などギャップが生じないだろうか?

  • すぐに辞めたりしないだろうか?

などなどいろいろ考えてしまいます。

そのため、私は、新卒の面接で「その志望動機ならこんな会社もあるよ、検討したことある?」など聞くこともあります。
応募者からすると(こんなこと言われるということは落ちたかも)と思うらしく不評ですが、入ってから後悔してほしくないので、面接で聞いておきたいことの1つです。

面接の目的は見極めだけではない

面接の経験を始めたばかりのときは、面接者を合格させるか不合格にするかの二択の判断で必死です。
次に、そこの判断ができるようになってくると、通過させる場合に提示する給与条件なども考えるようになってきます。
それもできるようになると、面接を通して、自社への志望度をどう上げるかということが重要になってきます。

面接とは、こちらが選ぶ立場のように見えて、実は選ばれる立場であるということを忘れてはいけません。
中途、新卒を問わず、内定を出したものの、内定辞退で、他社を選ばれるということが少なからずあります。
これは本当にショックです。
面接でもっと魅力付けできたかもしれない!という後悔があります。

「他社のほうが給与が高いので」という理由で断られるのはまだましです。 他社と同じ水準の給与提示は、経験・能力、今のメンバーとの公平性、人事制度などからできないというケースがあるからです。
しかし、それ以外の理由で選んでもらえない時は後悔の念が出てきます。
そのため、最終面接における魅力付けは非常に重要です。

面接の場は、応募者を見極めるだけでなく、応募者と面接官が濃い接触のできる非常に貴重な機会です。
もし、この人は是非欲しい!と思ったなら、その場で口説くということも重要だと思います。
私自身、新卒で入った会社は、二次面接で常務から「君と一緒に仕事がしたい。
もうスーツはクリーニングに出していいから」と言われたことが就職先を決める大きなきっかけとなりました。

そのため、これはという人には「今、いろいろと話して○○さんと一緒に仕事をしてみたいと思いました!どうなったら、どうすれば当社に来てくれますか?」

以前、人事コンサルタントの曽和さんが次のようような投稿をFacebookにされていました。

この投稿にあるように、必要とする・必要とされると関係で入社してくることは、お互いがハッピーなかたちだと思います。

そして「○○という理由で当社は○○さんを必要としている」というメッセージに加えて、具体的な入社後活躍できるイメージまで応募者に与えられることが面接の理想形だと感じています。

ただ、採用は恋愛と一緒で、押してどうにかなる場合もあるし、引かないといけない場合もあるようで、なかなか難しいものです。相性の問題とかもありそうですし。

いずれにしても、応募者に真摯に向き合うことが何より大切かなと思っています。

本当に大事なのは入社してその人が幸せかどうか?

面接において、応募者は入社することをGoalに面接を受けに来ることがほとんどです。
しかし、面接官は入社してその人が幸せか?の未来のことまで考えています。
いざ、面接は通ったけど、イメージと違ったので、早期退職。
これは、誰にとっても不幸です。
そのため、面接官は入社直後のみならず、将来も活躍のイメージが持てるかを判断軸にします。

できれば、応募者も面接合格・内定をGoalとせず、入ってから何をするか?どう会社に貢献するか?どう自分自身が成長するか?にフォーカスして面接にのぞんで欲しいと思います。

学生向けのインターンシップなど、機会あるごとに次の話をします。
安野モヨコさんの『働きマン』です。

これは本当に面接において重要なことだなと思います。

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