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潜入捜査 1

実は1年程前から、夫の親と同居している。

理由はというと、夫がアルコール依存症を拗らせてから、私が肉体的にも精神的にも1人で依存症の夫の相手をするのが無理になったからだ。

ある日夫が道端で倒れていたらしく、その横を通った親切な方が私のケータイに連絡をしつつ、救急車を呼んでくれていた。それはちょうど家の近くだった。私は仕事帰りで、家の近くまできていたため、すぐに駆け付けることができた。救急車のそばで介護してもらっている夫のところに駆けつけると、夫は目を覚まし、

「病院に行きたくない!!!」とパニックに陥っていた。

ちょうどその数週間前に病院で検査を受けたところだったこともあり、それを伝えると、救急車の隊員の方は、

「ちょっと頭を打っているようですが、他のところは以上ないので、無理に連れて行かなくてもいいですよ。ただし、夜中に吐き気をもよおしたりする場合は、病院に行ってください。」

と、丁寧に私に説明をしてくれた。そして、お酒のせいでまともに歩けない夫を、家の近くまで連れてきてくれた。

ようやく家に着いた時、私は夫の義理の姉に電話していた。その頃、夫は母親に、

「風の子がお金をくれないから、食事もまともにできてない」

と嘘の連絡をして、小遣いをもらっていた。私が家に十分すぎるほどの食べ物と、飲み物を置いていたにもかかわらず・・・夫の母親には私からも状況を説明して、小遣いを渡さないように連絡をしていたけど、夫が”金欠”になることはなかった。そんなこともあり、私は夫の母親とまともに話が出来ず、夫の兄嫁(義理の姉)に相談をしていた。そんなこともあり、救急車で運ばれかけた事などを義理の姉に伝えると、「(夫を)こっちに返しておいで。とりあえず、こっちでしばらく様子を見るから」とアドバイスしてくれ、夫の両親にも話をつけてくれた。そんなこともあり、夫は一度実家に帰ることになった。

ただ、私の仕事のこともあり、それから数年間、私は夫と別居状態になった。


夫には、「お酒を辞めないと一緒に住まないからね」と話をし、夫も断酒を約束してくれたけど、それが守られる事はなかった。本来なら私は夫のところへ行くべきではなかったけど、色々あって、夫の両親と同居しながらおっとのサポートをすることになった。まさか、これが「潜入捜査」のような方向に進むとは思っていなかったのだけれど・・・


すると、同居をし始めてから、夫の依存症につながる「証拠」のようなものがちらほらと見えるようになってきた。


私が別居中、夫が実家に帰ってしばらくしてから、夫が断酒のリハビリ施設に行くという連絡がきた。

「まずは第一歩だな」

と思っていたし、その後夫も地元で仕事をし始めたので、リハビリの効果があったんだと思っていた。

しかし、同居し始めてから、色々と「真実」が見えてきた。そのうちの一つが、夫はリハビリ施設に3日しかいなかったということ。

夫が施設から「施設で虐待を受けているから、迎えに来てほしい」と連絡し、それを信じた母親がすぐに迎えに行ってしまったということだった。

その後、母親曰く、「私がお酒の量を管理していたから」ということで、減酒はしていたようだけど、何も解決には至ってなかった。

夫の母親はいわゆる「マイクロマネジメント」をする人で、30過ぎになった夫とその兄弟に対しても、未だにそれを行っている。夫の兄弟は両親の近くに住んでいて、母親はそれぞれの子供のスケジュールを管理している。

自由奔放に育てられた私はそれを聞いてゾッとした。

また、私が別居していた時も、夫の身の回りの世話は全て母親が行っていた。掃除、洗濯、部屋の片づけから・・・何もかも。

ただ、同居するようになってから、両親から生活のサポートがあったため、夫と過ごす時間が前より取れるようになったこともあり、少しずつ夫も自分のことを話してくれるようになった。そのひとつが、

「小さいころから、主導権は全て母親にあって、何も自分で決める事ができなかった。」

というものだった。私が驚いたのは、夫は自分の髪型すら自分で決めることができず、母親が勝手に美容院に電話して、髪型まで指定していたということだった。

「こんな両親ホンマにおるんやなぁ・・・」

と、夫の話しを聞いて、私は夫の事をさらに可哀そうに思ってしまった・・・これらの内容は夫の虚言ではなく、本当の事なんだなということは、私が身を持って体験したこともあり、すんなりと夫の話を受け入れる事ができた。そんな事もあり、私は夫の事を前よりももっと理解できるようになったと思う。そんなこともあって、夫が少しずつ私に対して心の奥に隠していたことを話してくれるようになった。

こういった事が理解できるようになってから、私はまず「夫の意思を前より尊重しよう」と思いながら生活するようになった。


今私が夫の両親と生活している家は2世帯住宅のような感じで、1階の生活スペースを丸々使わせてもらっている。それに関しては感謝している。ただ、両親の生活スペースと私たちの生活スペースは階段ですぐに行き来できるため、私が同居しだしてすぐの頃は、何をするでもなく、両親が頻繁に私たちの生活スペースに降りてきていた。

ただ、少し経った頃、私たちが出かけて帰ってきた時に、変な違和感があったので、私は少し嫌な予感がした。

すると、どうやら、私たちが家を空けている時に、夫の両親が私たちの生活スペースに降りてきて、冷蔵庫の中をのぞいたり、色々「物色」していたようだった。そのことを夫に話してみると、

「あー、たぶんしてるね。だって僕も子供の頃から両親が部屋の中を隅々まで抜き打ちでチェックするのは当たり前だったからね」

と一言。その次の日、私は、寝室・私の部屋・夫の部屋のすべてに新しい鍵を付けた。笑

百歩譲って、冷蔵庫の中はいいとしても、それ以外の生活スペースや私の部屋を物色されるのは本当に気持ち悪い。夫に「そこまで神経質にならなくても」と言われたけど、お風呂場に置いていた私の下着も、鍵付きの寝室に移動させた。笑


10代の子供の部屋をチェックするのはわからなくもないけどなぁ・・・と思ったけど、「子供のプライバシー」と「自由」を尊重して育ててくれた私の両親にあれほどまでに感謝した瞬間はなかった。


夫は人生の大半を全て両親に管理されていたようだ。

髪型、着る服、行き先、大学、就職先・・・

私が夫と付き合っていた頃、何度か両親と会った事はあったけど、全然そんな事は感じなかったし、結婚するときも、彼の両親から何か言われたりすることもなかった。外から見た彼の両親は「優しい両親」だった。ただ、確かに、優しい両親なのだが、何か色々とズレている事もわかった。そして、その両親のズレが、夫に様々なプレッシャーを与えていたようだった。

夫が私と結婚するにあたって、どうしても両親から出来るだけ離れたいと懇願してきたので、当時私が住んでいた所で生活をスタートさせることにした。ただ、この時、私は「彼と両親は何かあるのかな・・・」と少し疑問に思ったけど、何も聞かずに彼の希望通り私のところで暮らす事になった。


そして、彼はその希望、そういったしがらみから離れて生活できていたし、仕事のストレスはあったとしても、何でアルコール依存症にまでなってしまったのか・・・

物理的な距離は両親と離れることができたけど、両親は彼にしっかりと首輪をはめていたようだった。彼は当時、彼を苦しめていたけど、私に話せてないことがまだまだあったのだ・・・マイクロマネジメントは母親だけではなかった。


ー つづく -


☆風の子のつぶやき☆

夫と私は今二人で一緒にカウンセリングを受けています。

私は夫のアルコール依存症と向き合おうとしたときに、夫の両親との関係で色々と見えてきた事があったので、まずは夫がそれに向き合わないことには何も解決しないなと感じたため、それが解決できるようにサポートしています。

何より重要だと私が感じた事は

「彼が精神的にも肉体的にも”自立する”」

ということ。ただ、彼と両親の闇は思った以上に深そうなので、時間がかかるかもしれませんが、出来るところまで頑張ろうと思っています。

これは、私が彼に強制しているわけではなく、彼が私に話した「希望」だったので、とりあえずそれに付き合っています。

最近では「毒親」とか「親からの呪縛」とかそーいった話が話題になっていますが、まさか私の身近でそんな事があるとは思っていなかったので、この潜入捜査で家族の在り方について、学んでいるところです。

私が最初に行ったことは、両親からの干渉を少しずつ減らすことでした。


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