初回授業
新卒の私は、高校1年生の授業を担当することになった。大学を卒業して間もない、授業の勝手もわからず緊張に震えている新任教員に対する学校側の配慮だろう。ありがたいかぎりである。
それでも、私は中学校を卒業したばかりの初々しい生徒たちとうまく関わっていけるのか心配があった。
なぜなら、初回授業は生徒と対話型の自己紹介をすると決めていたからだ。
「趣味はマンガを読むことです。みんなのオススメの漫画ってあるかな」
「高校生のころはテニスをしていました。テニス部に入ろうと思っている人いますか」
などと、生徒と軽快に対話を重ねるには、生徒側の良好な反応も必要である。
「盛り上がらなかったらどうしよう。」
「しらけたら、次から授業やりにくいな。」
「生徒全員の視線に耐えれるかな。」
などなど、
新卒教員の心配は尽きないのである。
さて、そんな中、迎えた初回授業
予定通り、扉を開けた先には生徒たちの視線が・・・
なかった
なかったのである。
そこにあったのは、
教室における、私という異物を排除しようという生徒の熱い視線だけであった。
あるいは、一様にうつろな目をして、スマホをのぞき込んでいる集団が点在していた。
チャイムなど意に介さず、座る気配など一ミリもない彼ら
なんとか席に座らせ自己紹介を始めても誰も聞いていない。
スマホをいじり続けているのだ。
当然、自己紹介は失敗に終わり、成績の付け方や教科の学習方法などですら、誰も聞くことなく初回授業は終わった。
職員室へ戻り、先輩教員にこの話をすると
「あー、そういうもんだから大丈夫だよ」
と、屈託のない笑顔で返された。
どうやら、そういうもんらしい。
私のイメージしていた初々しい生徒は幻だったようだ。
私が通っていた高校とは大きな違いを感じた初日であった。
なお、他クラスでは掃除用具入れに隠れた生徒がいたり
直前の授業までいたのに、急に学校から姿を消した生徒がいたらい・・・。
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