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新ハムレット〜太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?

太宰治の『新ハムレット』は戯曲ではなく小説で、作者の言い訳から始まる。

シェイクスピアの『ハムレット』とは内容が異なり、
王(ハムレットの父)を殺して王となり、王の妃をも自分の妻とする王の弟(ハムレットからすれば叔父、クローディアス)という主軸は変わらないものの、
ポローニアス(古くからの臣下でオフィーリアの父親)を殺害してしまうのはハムレットではなく、王であり(つまり、先王を殺した叔父さん)、
現場を目撃して自殺するのはオフィーリア(ハムレットの恋人)ではなく妃(ハムレットの実母)。

ハムレットの叔父さんと母親の打算、
それから長年王家に仕えてきたポローニアスの、父親としての娘を思うあまりの常軌を逸した暴走がけっこうグロテスクな、太宰治らしい作品になっていて、
心理が入り組んでおり複雑。

最初に「こんなのができました」「創造の遊戯」などと言い訳しているけれど、だいたい、太宰治が言い訳したり、
いかにもなタイトルをつける時は、
とても自信がある時だと思うので(『晩年』しかり、『人間失格』しかり)、
この作品も自信作だったのではないかと思う。『新ハムレット』って……。4ヶ月もかかって書いている(とわざわざ書く太宰治)。原作と読み比べてみてほしいなどとも書いている。

作者の言い訳から始まり、
全員が言い訳しているような台詞の羅列で構成されているこの作品の舞台化。
忠実な再現であったように思う。
演者の皆さん、台詞多すぎて大変だったと思う。
90分、70分の2幕構成だった。
客側も体力必要だった。

・松下由樹さん。妃としての強さ、ハムレットを持て余す母親としての葛藤、オフィーリアの味方になりたい女同士の親しみを込めた会話、ガートルード(ガーツルード)のさまざまな側面を演じてらっしゃって見事だった。
1幕と2幕では別人のように見えた。

・ハムレットがラップしていた。太宰治の原作、ハムレットの独白部分から歌詞が構成されていてビートも良かった。でも、音響の調子が悪かったのか、ラップがあまり聴き取れなかった。なぜか、足元にカセットデッキが置かれていて、要らない気がした。ハムレットのラップ、ホレイショーのオペラ風台詞回し、ポローニアスの歌舞伎風台詞回しと、人類はさまざまな手段で言葉を伝えようとしてきたのだなと思った。
ハムレットは言葉に飢えており、愛情も言葉で伝えてほしいと願っている。
私も言葉とその伝え方について考えてみようかという気持ちになった。
ラップの作詞・作曲はMummy-Dさん。
上記の理由で、ハムレット役の木村達成さんのラップももう一度聴きたいのだが、Mummy-Dさんは歌唱指導もしたそうなので、Mummy-Dさんの歌唱音源も聴いてみたい。歌詞はパンフレットに載っています。
※Instagramでも見ることができたので、貼っておきます。

・YouTubeに公開ゲネプロの時のがあると教えてもらいました。少し、ラップ聴けます。

・池田成志劇場×加藤諒劇場が濃くて良かった。

・観劇から時が経った今、平田満さん演じる王がジワジワ怖い。

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