事あるごとに丘に連れて行かれる話の日。

皆さんには思い出の景色ってありますか?

この景色を見ると当時の思い出が蘇ってくるなぁみたいな。

僕には地元の新潟に思い出の景色があって今でこそ行くことは無いのですが、最近ふと思い出したので書いてみます。

読んでみてください!!





僕が小学校二年生の時、家でゲームをしていた僕に母親が言ってきた。




「お父さんと別々に暮らすことになったから引っ越すことになった。」




意味が分からなかった。

当時は全く実感が湧かず意味も分からなかったのでそれを言われてもケロッとしていた。

しかし引っ越し当日、いざ家を出る時に一気に実感が湧いてきて

「ヤダ!!!何でお父さんと離れるの!!!」

と号泣したのを覚えてる。

母親は必死に僕をなだめながら車に乗せて引っ越し先に着いた。




元の家から車で5分の場所だった。




「え、同じ町内?」

近さに驚き過ぎて泣き止んだ。

僕の母親が元の家から車で5分の所でスナックを経営していて引っ越し先はそのスナックの2階だった。

しかもその後高校を卒業するまで平日は母親と、週末は父親と過ごしていたため今でも両親が離婚している実感がない。


ただ当時の僕は毎日会っていた父親と会えないのが寂しくて度々泣いていた。

すると母親が言った。



「お母さんの好きな景色があるから行こう。」



車に揺られること20分、市内を一望できる丘に着いた。

自分の家も、家の近くの公園も、通っている小学校も全てが一望できる丘。

そこで母親と共に無言でその景色を眺めた。

当時の僕は思った。



「え、何この時間。」




小学校2年生のガキには退屈な時間でしかなかった。

きっと母親は離婚という節目で自分の好きな景色を息子と共有したかったのだろう。




引っ越ししてから少しして我が家に犬が来た。

名前はジョン。

シーズーという小型の犬種で家の中でいつも一緒に遊んでいた。

ジョンを飼いだして約1年、僕が小学校3年生の時、いつものようにジョンと遊んでいる僕に母親が言った。




「ジョンと別々に暮らすことになった。」




え、また?

別れの頻度多くない?


僕は言った。

「ジョンと会えなくなるのはヤダ!!!ジョンはどうなっちゃうの!!??」

すると母親は言った。

「ばあちゃんの家で飼うことになった。」




また同じ町内だ。




ばあちゃんの家は車で5分程で着く上に週2.3回は遊びに行くような場所。

父親の時といいジョンの時といい僕の大切な存在は狭い町内を移動する傾向にある。

(ちなみにこのジョンの引っ越しに関してはやむおえない事情がありました。)

「いつでも会えるし事情があるからまあいっか!」

なんて思っていると母親が言った。




「丘へ行こう。」





出た丘。

1年振り2度目の丘。

なるほど、母親は何か転機を迎えると丘に行く傾向にあるのか。

まあ愛犬との別れは丘に行くべき案件だろう。

ただ、今回はそこまでの精神的ダメージは受けてないのだが。

車で20分、また思い出の丘に来て無言で景色を眺める時間。



「マジで何この時間。」




早く家に帰ってパワプロがやりたかった。




それから時が経ち中学3年生の冬。

僕は高校に進学するために一生懸命勉強していた。

そして受験当日も力を出し切ることができて迎えた合格発表の日。

なんとか合格することができた。

「よ〜し!高校の入学式まで遊びまくるぞぉ〜!」

母親の車でウキウキ気分で帰っていると母親が言った。




「丘へ行こう。」





でしょうね。

第一志望校合格はもう丘案件だよね。





6年振り3度目の丘へ。

また無言で景色を眺める時間。

ただ今までと違ったのは、少し大人になっていたのか丘からの景色を少しだけ楽しめるようになっていた。






それ以来僕はあの丘には行っていない。

次は僕が芸人として成功した時に母親に言ってあげよう。



「丘へ行こう。」



って。


〜fin〜










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