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物にも住所とおうちをあげて

爪切りが旅に出た。

きっと足が生え、私に別れも言わずにそっと1人旅に出て行ったのだと思う。

最近使ってあげなかったから、寂しかったのかもしれない。ちょっと爪が伸びていることも認知しながら、爪切りに手を伸ばさなかったことに怒っているんだ。

でなければ、爪切りがいなくなるなんてことはない。

・・・

人が「爪切りがなくなった」とか「耳かきが消えた」という話をしている時、私は「元ある位置に戻さないからだ」と思っていた。

めんどくさがりで掃除嫌いの私だけど、そういう小さなものがなくなった時のイライラに耐えられないので、そういうことはマメになってあるべき位置に戻すよう意識をしている。

私たちに家と住所があるように、物にも家と住所を作ってあげなさい。

掃除や片付けをサボりがちな私に、祖母が言ってくれた言葉だ。

物にも家と住所があれば、ものも人間に感謝し、信頼関係ができる。そうすれば、なくなったり消えたりせず、ずっと仕えていてくれるよ。

その言葉を大切にしていた。

それに「物にも家と住所を」という言葉が妙に好きだった。

あれどこにある?と聞かれた時に、「〇〇の棚の上の段の右から2番目、籠網の箱の中」と言った感じで、正確に答えられる住所と家は確かに必要だとも思った。

私の家は綺麗ではない。
これは謙遜でも何でもなく事実。

ただ、あるべきところに物はある方だと思う。

また会社ではそれを徹底しているので、どの職場でも机の周りは綺麗だと褒められることもある。

(一昔前のお姑さんが「綺麗な台所ねー、きっと何もしてないのね」というような嫌みでないことを願うが)

そして、どこに何があるのかを周りのみんなも把握しているので、メンバーは決まっているが爪切りを借りにきたり、瞬間接着剤をもらいに来る人たちは勝手に私の机から取っていく。

それくらい、確実に定位置にものがある状態を作っている。

・・・

ただ、そんな私の爪切りがない。これは由々しき事態である。

前回使ったときもちゃんとおうちに戻してあげたはずだ。

それなのに5分ほど探しては見たが見つからず。呆然としている私を、足先の白がジッと見ている。

あなたの爪切りに、住所とお家はありますか?

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。