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理想のニコイチ

たこ焼き器を使い、ホットケーキミックスでベビーカステラを作った。

ひとつの穴にひとつを作ろうとすると中途半端な形で、綺麗な丸にはならない。かと言って、普通に作ってふたつを重ねる方法だと不格好な楕円形になってしまい、美しくないばかりでなく、中央部分の火の通りが甘くなる。

だから、一つの穴に少し少なめにタネを入れ、良きタイミングでふたつをひとつにする。

そうすると綺麗な丸い形ができて、火の通りも理想的なベビーカステラになった。

これを1人でやるのは多少寂しくも思えたが、どうせやるなら美味しく食べたいし、そうやって試行錯誤を繰り返すのは1人でも十分に楽しかった。

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クラフト・エヴィング商會を知っているだろうか。

作家であり、グラフィックデザイナーである吉田篤弘氏と吉田浩美氏のご夫婦が活動されているユニットだ。

ブックデザイナーとして文芸書など多くの書籍のデザインを手がけているが、私が好きなのは実在しない書物や雑貨などを手作りで作成し、その写真に短い物語風の文章を添えるという形の作品たちである。

この魅力は、相乗効果にあると思う。

実際は、それぞれ1人ひとり別々に作品を作ったとしても、きっと素敵なものができると思う。

しかし、彼らは共同で行ってきた。
2人だからこそ出来ることがあるからだ。

彼らの展覧会かパンフレットか何かで「答えはいつも2つある」という言葉を見て、2人である理由が腑に落ちた気がした。

「二兎を追うものは一兎をも得ず」ではなく、「2人だから二兎を追える」というのだ。

また、1人でやっていては感じることのできない「作品がまるで自分たちで作ったものではないよう」だと思えるものができたときが嬉しいと語る篤弘氏がとても素敵だと思えた。

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人が2人でひとつになるときは、ベビーカステラのようではならない。

1人では立つことができないから2人になるのではなく、1人で立っている人でも必ずある足りない部分を補い合い、2人でいることで2人以上の力や魅力を生む。

それが理想的なニコイチかと。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。