新しいものを受け入れる懐
母の人生初タピオカに立ち会った。
現在は退院したものの、まだ日常生活を滞りなく行えるわけではなく、2.3日の間は母に来てもらい、世話をしてもらっている。
まだ歩くにも時間がかかるが、今日はリハビリを兼ねて2人で散歩に出掛けた。
5月といえど、日中はなかなか暑い。
帰り道、付き合ってもらったお礼に何か甘いものでもご馳走しようと提案したところ、ちょうどタピオカ屋が見えた。
一時は一世を風靡したタピオカさん。
その店は、以前は行列ができていたお店があるが、今じゃ待ち時間もなく、マクドナルドより早くテイクアウトができる。
久々にタピオカもいいな…と思って、提案したところ「いいね、いいね!」と乗ってきたので買って帰ることにした。
注文の際、何にするかと聞いたら急に恥ずかしそうに、「本当は初めてなの。何がいいかな?」と。
誘いに乗ってきたところで、かなり乗り気だったし、そんな素振りも見せなかったので少し驚いたが、とりあえず定番1位と人気1位を買い、飲み比べてもらうことに。
家に帰り、半分ずっこした。
そして、とても美味しいと言いながら、とんでもない勢いで飲み切った。よほど気に入ったらしい。
また遊びに来た時はご馳走してねと言われた。
・・・
私は母が好きだ。
好きなところをあげればキリはないが、そのうちのひとつは、今日のように新しいものを先入観や固定概念で拒絶せず、受け入れて楽しもうとする余裕があるところである。
母は今年で66歳になるが、流行りに対しても簡単に否定したりはしない。
年配の人の中には、どちらかというと流行に対して抵抗があり、拒絶や否定をする人もいる。むしろそういう人が多数派だと思う。
しかし、母はそういう人たちと明らかに違う。
私が中学生の時、宇多田ヒカルがデビューして家族の中で1番にハマったのは母だった。1stアルバムを買おうとしたら、「私が1番聴くから」と買ってくれたのを覚えている。
今1番ハマっているのはツムツムで、毎日孫2人と(私の姪)とハートを送り合っているらしい。ちなみに毎週1番の高得点を出すのは、高校1年の孫でも小学6年生の孫でもない。他ならぬ母がぶっちぎりとのこと。
普段アニメを観ない母なのに、私が好きなアニメも一緒に観た。今日もタピオカを飲みながら、「昨日見てたアニメの続きを見ようよ」と母の方から言ってくれ、このままいくと全13話分のアニメを明日で観終えるだろう。
まさか、母が「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」にハマるとは…。
そうやって、新しいものを受け入れて世界を広げる懐が、とても尊敬できるのだ。
・・・
ところで、タピオカは一体なにもの?
と、今更な質問もしてきたが、訳が分からないものでも美味しいと言って微笑む母を見ながら、私もそんな人でありたいと思った。
どちらかというと、ただでさえ流行りに疎い私だけど、3〜40年後は母のように、流行を受け入れる人になれるだろうか。
おばあちゃんになっても好奇心を持ち、楽しめる心を持っていられるだろうか。
まずは今から、何でもかんでも拒否するのではなく「やったことないから」「私そういうタイプじゃないから」という理由で物事を否定しないように。
実は私は先週まで『鬼滅の刃』を観たことがなかった。拒否していたわけでもないけれど、ここまで見なかったのだから今更見るのも気が引けて、僅かに遠ざけていた部分もあった気がする。
でも友人に勧められ、入院期間を利用して2日で一気見をした。うん、やっぱり面白い。
無駄な意地で拒否し、まだ見ぬ世界に触れられないのはもったいないことに改めて気付かされた。
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新しいもの、受け入れていますか?
今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。