見出し画像

世界のお母さんへ

私はマザコンだ。
母のことが好きすぎると思う。

だからといって「ママ、ママ」と言ってベタベタしてきたわけではない。むしろ幼い頃から「ママ」と呼んだことすらない。

ただただ、全力で尊敬している。

母に尊敬の念を抱くエピソードはたくさんあれど、1番印象的だったのは、私がまだ小学2年生の時だった。

・・・

小学2年生というのは、「大きくなったら何になりたい?」という答えを、少しずつリアルに考えはじめ、様々な職業に目を向けていく年頃だった。

私はその頃から「おばあちゃんになったら書道の先生」というだいたいの歳まで指定した目標こそあったが、おばあちゃんになるまでが問題。様々な職業に目移りした。

警察官になりたくて、小学生のくせにお小遣いで警察官になるための参考書を買ってきて両親を驚かせることもあったし、庭師に憧れて庭の木を切りまくるという珍行動を起こしたこともある。

他にも美容師や喫茶店のマスター、匂いが好きだからという理由だけでクリーニング屋もいいな、と話していた。

しかし、私の母は根っからの専業主婦で、仕事をしていた話を聞いたことがなかった。幼心に大好きな母に対して「夢もなかったのか?」「母の人生はそれでいいのか?」と思った。

ある日我慢ができず、直接母にその問いをぶつけると、母は私を膝に座らせて言った。

「お母さんが「お母さん」だけをやってると思ってるの?それは大間違いよ。

あなたたち兄弟の喧嘩を止める時や、家族の平和を守る警察官の時もあるし、花壇の手入れをしている時は庭師にもなれる。

いろはの髪を切っている時は美容師さんの気持ちだし、毎朝コーヒーを入れている時はマスターにだってなれる。毎日のお洗濯やお父さんのカッターシャツにアイロンをかけている時は、クリーニング屋さんになっているつもりなのよ。

だから毎日いろんな職業が出来るお母さんが、最強だと思わない?お母さんは「お母さん」の仕事が大好きよ。」

と。

確かにその通りだ。
私たちを赤ちゃんの頃から育児をする母は保育士であり、車での送迎はタクシーの運転手さんに変身する。

お母さんが1番すごいや、と。
そして、それを「だから大変」というのではなく、楽しそうに話す母が偉大だと思った。

その話を以来、母に将来の夢を聞かれたら、「お母さんみたいなお母さんになること」というのがお決まりのフレーズだった。

もちろん家の外では、「まだお母さんになりたいとか言ってるの?」と馬鹿にされそうで言えなかったけど。

・・・

専業主婦の友人から、LINEが届いた。

なんでも、旦那さんのテレワークが決まり、これから4週間以上もの間、日頃の家事に加えて毎日3食の食事を作り続ける日々を想像すると耐えられない…という内容だった。

差し詰め、その友人は長期滞在のお客様を抱えた旅館の女将と言ったところだろうか。

女将さんになることは、私の今後の人生では考えられないし、職業体験のように考えてみれば、案外楽しそうだな…と思うが、口が裂けてもそんなことは言えない。

実際にやるのが大変なことは、百も承知なので、浮かれたこと言ってるなと罵られて当然。楽しむ余裕なんかない、独身のお気楽もんは黙ってろと、お怒りになるのもごもっとも。

応援しています、世界のお母さん。

私にできるのはこれくらいです。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。