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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #65_256

十二 車電房 
 地鉄の駅を上がり、劉は周りを見回す。辺りは古い倉庫が立ち並んでいる。地図を頼りに、劉は車電房を探す。
 地鉄の車両基地に隣接した一角。車電房の看板。車電房の引き戸を劉は開ける。そこには、一時代前の古い台式計算机《デスクトップパソコン》が整然と並んでいる。麦金塔《マッキントッシュ》、康柏《コンパック》・・・。今は無き。
「失礼」劉は声をかける。台式計算机に向かう人間は誰も顔を上げない。よく見れば、皆耳栓をつけている。地下鉄の騒音でも響くというのか?
「何か?」劉は振り向く。長髪の若者が立っている。劉は名刺を差し出す。
「公安?」
「病毒の顧問《コンサルティング》の件で伺いたい」
「どこで、それを?」
「大学の記録に」
「おたく達が、めちゃくちゃにした大学」
「何故、それを?」


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