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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #59_250

 こんな場所に、果たして徐はいるのだろうか?劉は疑う。砂漠の砂は風に乗り電脳に入り込む。故障の原因となることは必然だ。電源の安定供給は受けられるのか。データセンターや無停電の自家発電装置でも設置しない限り難しい。
 劉と魯は、トラックの運転席に乗り込み街へ。日干し煉瓦の街中には、文明と呼べるようなものはない。全てが砂埃の中に霞んでいる。トラックの一群は、砂埃を立てながら街を通り過ぎる。長く走り、ようやくある施設の前で止まる。
「ここが?」
「そうだ。この街で公に電脳が利用されているのはここしかない」
「では、薫陶の暗号は何を意味している?」
 薫陶の残した暗号の意味。劉は気に掛かるる。何故、この大学名が暗号から容易に解読されたのか。


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