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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #66_257

「電子郵件《メール》で学生が知らせてきた。どうぞこちらへ」若者は奥の会議室へ劉を伴う。
「張です」懐から中文電脳記録簿《中国語電子手帳》を取り出し、そこに挟んだ名刺を差し出す。劉が受け取った名刺には、車電房代表社員張某とある。
「あなたが経営者?お若いですね」
「よくいわれますよ。信息産業《IT産業》の風険企業では珍しくもない」
「ここの責任者という立場ですね。では、顧問《コンサルティング》先の記録を全て提出して下さい」
「それは難しい。依頼先は安全《セキュリティー》が甘いなど公表するはずはない。公にした途端、瞬時に黒客《ハッカー》の餌食になる」
「では、すでに公になった、あの大学の件を伺います。発生したのは宏病毒《マクロウイルス》で、電脳病毒ではなかった」
「顧問《コンサルティング》役務は、反病毒軟件《アンチウイルスソフト》のアップデートだ。定期的に電子郵件で送っていた」
「宏病毒《マクロウイルス》の反病毒軟件《アンチウイルスソフト》ということですか?」


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