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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #73_264

「いや、肝心の軍の網絡《ネットワーク》も掌握している。西欧諸国の高科技《ハイテク》軍隊の網絡《ネットワーク》も含めて」
「徐は魔法の国を創りたいんだ。それが古典劇をやってた奴の妄想だ。張り巡らされた
網絡《ネットワーク》という糸。それで操ろうと」
「そんな単純なことじゃない・・・」薫陶は膝を抱え項垂れる。
 一週間後、地下室の扉の鎖が外れる。開いた扉の隙間、照明が部屋に差し込む。
「時間だ」
「うん」
 二人は立ち上がり、扉の前に立つ。
「出よう」劉が勢いよく扉を開ける。扉の外。二人、体をほぐす。
「さて、どこから外へ?」
「車電房から上へ」薫陶が駆け出していく。
 劉は薫陶の後を追う。二人、車電房の地下室から上へ。そこに人影はない。設置されていた台式計算机も取り払われている。
「なにもない。奴らはどこへ?」


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