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電脳病毒 #2_193

 あの時代の幕を引くかのように、火車は夕暮れの光の中へ溶け出していく。その行く先には朽ちた高層高楼。ビルディング群が朧気に霞んでいる。往時はウルトラモダン、超現代的な高楼にも、今はひとつとして明かりの灯った窓はない。
 その燃え上がりながら小さくなっていく火車を見送りながら、劉は思い起こす。
 軌道の両側にひしめく飲み屋街。橙色の明かりが灯り始める。劉は三無人員、不法滞在者が集う一軒の飲み屋に入る。昔どこかで聞いたことのある、偶像歌星、アイドル歌手の歌が流れている。その手の震えた老人。酒精依頼、アルコール依存症だ。
「あの男、最初は段ボールハウスの俺達をただ眺めていただけだ。そのうち、声を掛けてきた。俺達の身の上話を聞き始めた。いや、男の方が、俺達の身の上を言い当てたっていうのが正しい」