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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #115_295

 薫陶は、遠目で塵芥集積所を見る。サーフボードは、もう朝陽を受けていない。塵回収車は、何故かサーフボードだけを残していく。
 自転車を降り、薫陶は残されたサーフボードに近づく。間近にそれを見る。底を晒されたボード。その先端は欠け、至る所に傷が付いている。相当、使い込まれている。それで捨てられた?裏返す。色褪せた写真?ボードの表面に貼り付いている。
 砂浜にボードを立てた青年。その横に、少女が寄り添う。このボードは、思い出も乗せてきたらしい。今は持ち主からは見捨てられ。
 薫陶は写真を剥がし空に飛ばす。写真は、風に巻かれて海に消える。「さよなら」薫陶は呟く。薫陶は左腕にボードを抱え、右手で自転車のハンドルを押さえペダルを漕ぎだす。


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