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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #67_258

「そうだ」
「宏病毒《マクロウイルス》の反病毒軟件《アンチウイルスソフト》開発と顧問《コンサルティング》がこの会社の業務ですね。繰り返しになりますが」
「まあ、そんなところだ。そろそろいいですか?仕事が詰まっている」
「電脳病毒の反病毒軟件《アンチウイルスソフト》開発も手がけていると理解していいですね」
「電脳病毒は、最近、影を潜めている。あの電脳電影学院の事件以来。国家の一大事になってる風潮だが」
「質問に答えて下さい。電脳病毒の反病毒軟件《アンチウイルスソフト》を開発していますか?」
「案件対応。そういうことだ。さっき言ったように、客先は脆弱性など公表しない」
「いずれ、またお会いしましょう」
「どうかな」張は劉の名刺に目をやる。
 張は床の羽目板を上げ、地下室に入っていく。壁の偽装を外し地道を進む。廃線の月台に出ると、張は事務室に入る。薫陶の隣に座り、徐は台式計算机の顕示器を眺めている。


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