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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #77_268

 狼狗《シェパード》を携えた一人の兵士が機槍《機関銃》を構えて立ちはだかる。
「立て」狼狗《シェパード》は唸り、兵士は銃先を二人に向ける。二人、ゆっくり立ち上がる。
「どこへ行くつもりだ?」兵士は劉の肩を銃先でこずく。
 咄嗟に銃先を掴み、劉は兵士を押し倒しす。倒れた兵士は短銃を抜き、両手で劉に狙いをつける。劉は掴んだ銃先を離す。兵士は立ち上がり銃を拾うと、銃座で劉を殴りつけう。劉はその場に倒れ込み、意識が遠のいていく。狼狗《シェパード》の唸り声だけが耳に残る。
 トラックの振動で劉は目を覚ます。車は舗装道路から離れ、砂利道に入っていく。周りは劉に見覚えもない風景が続く。荒れた農地には作物は疎らだ。荷台に目を向ける。数人の男女が膝を抱え座り、銃を持った兵士が配置されている。劉は周りを見回す。だが、薫陶の姿はない。