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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #74_265

「ここは、もともと偽装だった。台式計算机はただのモックアップだし」
「ああ、一眼でわかった。型式が古過ぎた。何のためにこの会社を?」
「気功集団のトンネル会社の一つ。ただの三無企業《ペーパーカンパニー》だよ」

十三 流浪児童《浮浪児》
 二人は外へ。辺りの倉庫街は静まり返っている。地鉄駅まで来るが、駅のシャッターは降りたままだ。
「人っ子一人いない」劉は衣兜《胸ポケット》の手機《携帯電話器》をまさぐる。
「強制疎開させられた」
「強制疎開?」
「都市の人口を減らすために。政変《クーデター》は成功したんだ」
 二人は誰もいない街を彷徨い続ける。市街地に近づくにつれ、混乱の跡が目に入る。