見出し画像

Dead Head #91_187

「なぜ、そう思う?」本屋は苛立つように足を揺らす。
「後釜と、ちょっとした顔見知りでね。ヒロシの親父、寝返って逃げたんだろう。半島にある楽園に行くために」
「どうして、それがわかる?」
「ガタイのいい禿頭の中年男。俄《にわ》か荷役の男だが、誰だかわかった」
「誰だ?」
「親父だよ。ヒロシの」
「何故、そう思う?」
「ヒロシの部屋にあった写真立て。崩壊する前の家族三人の写真。そこに写っていた。かつらは被っていたが」
「それで?」
「地下銀行はどこかに移り、監視役のあんたはお役ご免になった」
「寝ぐらで腐るほど読んだ、三文小説以下だな」


この記事が参加している募集