見出し画像

Dead Head #94_190

 相部屋がヒロシの病室。ヒロシの頭は白い包帯に巻かれている。足にはギブスで固定されている。寝ているのか。目を閉じたままだ。
 ベッドサイドの丸椅子。幸緒の丸まった背中。疲れて目を閉じているのか。幸緒の肩に軽く手を置く。幸緒はハッと目を覚まし、俺を見上げる。首を垂れ、軽く手を振る。布がはためくように、軽くたおやかに。俺は視線をヒロシに向ける。その視線を追って、幸緒は頷く。『大丈夫』とでもいうように。
 涙が出る。何でだか、かわからない。ヒロシから預かった財布を幸緒に渡す。
 病院の屋上、空は洗濯物がたなびく青空。幸緒とベンチに腰掛ける。病院の受付からくすねた問診票を裏向け、ボールペンを紙に当てる。何を書いたらいいのだろう。握ったボールペンを幸緒が掴んでくる。指を拡げ、紙を一枚、幸緒に渡す。


この記事が参加している募集